濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
身長150センチ、華がスゴい“妖精”レスラーはなぜ“最強”を求めるのか?「鈍器で殴られたみたい」な敗戦でスターダム・なつぽいが見せた“意地”
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2023/09/30 11:02
センダイガールズの後楽園大会にて強豪・橋本千紘とシングルマッチを行ったスターダムのなつぽい
なつぽいの目が輝いた「ある場面」
フィニッシュは橋本の必殺技、オブライトことジャーマン・スープレックス・ホールド。しかしなつぽいも橋本を得意の“ぽい捨て”ジャーマンで投げ切っている。その場面について聞くと「見ました~?」と目が輝いた。
「橋本さんと闘うことで、私の“最強”もちょっと見え始めた気がします。私は体も小さいしパワーファイターじゃない。それは変えられないけど、プロレス界で唯一無二の存在になりたい。橋本さんにぶつかって、より確信が持てました」
ジャーマンは意地で投げた。「負けん気とか根性も強さ。それが証明できたと思います」となつぽい。他団体に乗り込むというシチュエーションも「燃えた」そうだ。
「新人の頃は“誰なの?”、“何ができるの?”という目で見られてきたので。他団体に上がって試合をすることで分かってもらうしかなかったんです。(8.19スターダム大田区大会で)神取忍さんと6人タッグで闘う前には“眼中にない”みたいに言われましたけど、そういうの大好物なんですよ(笑)」
パワー、テクニックだけではない“プロレスの強さ”
安納戦、橋本戦、さらにリーグ戦を重ねる中で“最強”は一つのものではないという感覚が強まった。何しろ橋本千紘がフォールをブリッジですり抜け、側転で技をかわすのだ。体格やパワー、格闘技的なテクニックだけがプロレスの強さではないのだった。
「リーグ戦で朱里と引き分けた時にも、それは感じました。朱里は蹴りとかフィジカルの部分が強いと思われてますけど、それだけじゃないなって。心の広さ、器の大きさが凄いんです。こっちが何をやっても受け止めてくれる。何をやられても大丈夫っていうことですよね。ああ、この人の一番の強さは“愛”なんだって思いました」
9.30リーグ最終戦、たむとの闘いは“夏の最強ロード”のゴール地点。橋本戦の後に言っていた「夏が終わる頃には一皮二皮むけて、より最強に近づいてると思います」という言葉をチャンピオンに勝つことで形にしたい。妖精には妖精の強さがある。