濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
身長150センチ、華がスゴい“妖精”レスラーはなぜ“最強”を求めるのか?「鈍器で殴られたみたい」な敗戦でスターダム・なつぽいが見せた“意地”
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2023/09/30 11:02
センダイガールズの後楽園大会にて強豪・橋本千紘とシングルマッチを行ったスターダムのなつぽい
「飛べる選手、動ける選手は私だけじゃない。“私だって飛べるし動ける!”という感覚では埋もれてしまうだけだなって。じゃあどうやってスターダムで登っていくかって考えた時に、カッコつけるのではなく、自分のすべてを曝け出していかなくちゃなって思いました。試合が面白くなるためなら、“性格悪い”も褒め言葉だと思ってます」
「みんな、いい試合をしようとしてるんです、当たり前ですけど。その中で、私は他の人がやってない形のいい試合がしたい」
大きなインパクトを残した“2連敗”
面白い試合とは何か。自分にとっての“いい試合”とはどんなものなのか。妖精は好奇心も探究心も旺盛で、だからこそ橋本のツイートに反応したのだ。7月16日、センダイガールズの後楽園大会に乗り込むと橋本とシングルマッチ。本人の中では、スターダムでメインを張った7月2日の安納サオリ戦から“夏の最強ロード”が始まっていた。
橋本戦の直後に始まった5★STAR GPでは初戦でスターライト・キッドに勝ちスタートダッシュに成功。スターダムの“アイコン”、IWGP女子王座を持つ岩谷麻優にも勝利している。
「サオリとのシングルがあって、橋本さんと闘って、そのままリーグ戦に入っていけたのがよかったんだと思います」
リーグ開幕戦以前に、“最強”を求めるなつぽいの闘いは始まっていた。言わば開幕戦が事実上の3戦目。エンジンの回転数も上がっていたわけだ。
安納戦、橋本戦はいずれも敗北。しかし大きなインパクトを残した。とりわけ橋本戦は今年の女子プロレスの中でも指折りの熱戦。橋本のパワー、なつぽいのスピードとテクニックが抜群の化学変化をもたらした。
「鈍器で殴られたみたい」「いま生きてる?」
アルゼンチン・バックブリーカーから脱出しながら体を翻し、そのまま腕ひしぎ十字固めという動きはなつぽいならではのものだろう。関節技というチョイスもできるのがなつぽい。単なる“飛んだり跳ねたり”ではないところを見せた。
一方で橋本が持つファイトスタイルの幅、懐の深さにも目を見張った。試合後のなつぽいが驚いていたのもそこだ。
「橋本さん、ハイスピード(スタイル)の動きもしてましたね。私の作戦その1はハイスピードの動きで先手を取ることだったんですけど、先にやられちゃいました。めちゃくちゃスピードあるんですよ。なんかニヤニヤしちゃいました。凄く楽しかった」
岩のような肉体には「本当に女子か」と思わされたそうだ。攻撃は「鈍器で殴られたみたい」で、技を受けるたびに「いま生きてる?」と自分に確認するほどだった。
「橋本さんはみんなが思う強さの代名詞。勝つためにはまず気持ちで負けちゃいけないと。それと予測できないようなアクロバティックな動きで対抗しようと思ってました。自分のいま現在の力は出せたんじゃないかと思います」