レジェンドとの対戦でも確実に成長

　攻防の中で安納に導かれ、天咲は感情を爆発させた。だがそれも一夜で覚醒したわけではない。5番勝負で少しずつ積み重ねたものがあったし、3月には故郷の京都で高橋奈七永とシングルマッチを行なっている。

　高橋は古巣のスターダムにフリー参戦中。“女子プロレス界の人間国宝”とも呼ばれるベテランは、若手選手を相手にした「パッション注入マッチ」が恒例になっている。天咲も高橋とパッション注入マッチで対戦。敗れはしたが、張り手の応酬は気合い十分だった。

「全部出し切れました。気持ちよかった」と試合後に語った高橋戦あっての安納戦。やはり天咲は少しずつ、しかし確実に成長しているのだ。

3月の「パッション注入マッチ」では、レジェンド高橋奈七永に正面からぶつかっていった　©Norihiro Hashimoto

　本人の中でも、ストーリーがつながっている。

「タッグタイトルマッチで勝つために、安納選手と闘う経験をさせてもらいました。いま絶対にベルトがほしいんです。リングで奈七永さんと約束したこともあるので」

　京都での試合後、高橋とのやり取りの中で天咲は「あと1年でスターダムのてっぺんに上り詰めます」と宣言した。地元でのメインイベントを終えて、思わず大きいことを言ってしまったという部分もある。ただ天咲は「地元だしそれくらい言ってもいいよね」で済まそうとは思わなかった。あくまで真剣に「てっぺん」を目指している。

「1年でてっぺんにというのは思わず出た言葉でもあるんですけど、明確な目標でもあります。タッグベルトに挑戦するのも、その目標があるから。奈七永さんがスターダムに参戦される時には“ちょっとでも成長を見せないと”って思ってます。奈七永さんが会場にいない時でも、何か噂が届けばいいなと。奈七永さんとの約束は果たさなきゃいけない」

高橋との試合後には「てっぺんに上り詰めます」と目標を語った天咲　©Norihiro Hashimoto

天咲の決意「プレッシャーを感じてしまう。ただ…」

　タイトル挑戦は9月29日のNEW BLOOD品川大会。スターライト・キッド＆KARMAの王者組にAZM＆天咲、羽南＆飯田沙耶の2チームが挑む3WAYの闘いだ。挑戦者同士の決着でもベルトが移動する変則的な試合、天咲は安納戦を経て「今なら獲れる」と自信を隠さない。それだけの経験をしてきたという自負もある。

「メンタル的に一番辛かったのは去年の夏頃です。それを乗り越えたのは大きかった。これからも大変なことはあると思いますけど、あの時があったから絶対乗り越えられる。大事な経験でした。

　注目を浴びるのはありがたいことなんですけど、どうしてもプレッシャーを感じてしまうことはあって。ただ、そういう部分でも負けたくないという気持ちは強くなりました」

　叩かれて、揉まれて、いよいよ結果を求める時期がきたということだろう。“超新星”ぶりが発揮されるのは、むしろこれからだ。

安納戦を終えた天咲。“超新星”ぶりが発揮されるのは、これからだ　©Norihiro Hashimoto

「可愛いのに、媚びてない」天咲の魅力

　安納は天咲を「可愛いのに“可愛い売り”してないですよね。媚びてない」と評していた。そのことについて天咲に聞いてみる。

「自分のことを可愛いと思ってないので……。だから注目されるのにも違和感があったんです。そんな自分が可愛さを押し付けても仕方ないですし」

　押し付けるなら強さと結果だ。もう「いい経験」はいらない。天咲は言った。

「AZMさんとベルトを巻きます。本気で狙いにいきます」