濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「可愛いのに、媚びてない」水着グラビア、写真集もプロレスのため…トップ女子レスラーも絶賛する“スターダム・天咲光由(21歳)の魅力”
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byEssei Hara
posted2023/09/29 11:01
8月18日、安納サオリとの一戦に入場する天咲光由
安納サオリからは「まず顔が可愛い。期待される運命」
タッグ王座挑戦を控え、8月18日のNEW BLOODでは「5番勝負エクストラ」としてフリーの安納サオリと初対決。「タイトルマッチの前に、自分の力をもっと高めたい」という理由からだった。全敗に終わった5番勝負だが、トップ選手との一騎打ちで力がついたという自覚もあった。
安納も天咲のことが気になっていたという。
「まず顔が可愛いじゃないですか。プロレスラーはそれも武器になる。そういうところも含めて期待される運命なんだなって」
ただ、その「可愛い」顔にあまり変化がないとも感じていたそうだ。これは他の選手からも指摘されていたこと。気が強いことは伝わってくるのだが、感情がなかなか表に出てこない。気持ちを内に秘めてしまうタイプなのかもしれない。
さんざん挑発されてようやく気持ちを爆発させる。記者会見でもそんなシーンが何度かあった。ただ天咲の試合を続けて見ていると、少しずつではあれ感情をストレートに出すようになってはいた。安納はタッグも含めて初の対戦で、そのことを実感する。
「もっとこい、もっと!」感情を出した打撃戦
安納vs.天咲で展開されたのは、これでもかという打撃戦だ。今の天咲に“華麗な大技”はいらなかった。とにかく真正面から全力でエルボーや蹴りを叩き込む。どんな技よりもそこに感情がこもるのがプロレスだ。
「もっとこい、もっと!」
安納は天咲の打撃を、つまり感情を受け止めて、さらに煽った。
「どうして今日このエクストラ、番外編の勝負をしたのか。その意味を考えたら、今まで学んできたことを出すのは当たり前じゃないですか。エクストラで私とやるからには今まで以上の、過去に出したことのない天咲光由を目覚めさせたかった。それに応えてくれたと思います。いや、応えてくれたという以上ですね。試合しながら“こんな顔するんだ”って驚きました」
対戦相手が「希望をもらった」と語る理由
勝利した安納は、天咲から「希望をもらった」とさえ言う。安納は女優からプロレスに挑戦、新人時代は本人にそのつもりがなくても「見た目だけ」、「本気でプロレスやってるのか」という偏見がつきまとった。だから天咲の苦闘ぶりも理解できるのではないか。
「最初から注目されてましたよね。この世界、目立つ子っていろいろあるんです。言えることも言えないことも。可愛いから得してるとか言われて、そうじゃないんだというのを見せるのって凄く大変で。そういったことを乗り越えての今。表情を見てくださいよ。堂々としてるじゃないですか。そこが好きですね。天咲光由と闘えたのは、私にとっても収穫でした」
実は安納戦の日、天咲は祖母を亡くしている。試合があるから実家にはすぐに帰れず、だが安納によればバックステージで泣いている姿は見せなかった。芯の強さは相当なもので、あとはそれを観客に分かりやすく伝えることが必要だったのだ。