猛牛のささやきBACK NUMBER
「いっつもしんどいですよ。本当に」中嶋聡監督の手腕に見たオリックス“3年目の進化”…やりくり上手な「令和の名将」が鉄仮面に隠す愛情と確信
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byJIJI PRESS
posted2023/09/22 11:06
その手腕でオリックスを3連覇に導いた中嶋監督。見据える先は黄金時代だ
昨年の優勝監督インタビューで指揮官は、「野手のみんなもわかっていると思いますけど、ピッチャー陣の頑張りがなかったらここまで来られなかったんで、野手陣、頑張ってください」と語っていた。だが今年は、投手陣を讃えた後、こう続けた。
「野手陣も非常にいい守備をして、いいところで打って、本当に勝利に貢献した」
54歳指揮官の真の手腕は…
中嶋監督はとにかくやりくり上手だ。
昨年まで打線の核だった吉田正尚がメジャーに移籍して抜けた今季は、新加入の森友哉や、覚醒した頓宮裕真がその穴を補って余りある打撃を見せていたが、森が怪我で夏場に1カ月以上離脱するなど、決して順風満帆というわけではなかった。だが監督は二軍も含めて状態のいい選手をそのつど見極め、昇格させたら即スタメンで使うなど、選手のいい時期を逃さず活かし、一戦一戦、勝利へとつなげてきた。
「(選手を思い切って起用する際の)基準のようなものは別にないです。『今、状態がいいな』とか、『このタイプのピッチャーに合いそうだな』といったことは考えますけど。でも、僕がそうやって思って使っても、選手がやってくれなかったら、ただの悪手なんで。そう考えたらやっぱり選手がすごいと思いますよ」
そう言うが、選手が結果を出しやすい環境を常に監督、コーチが整えている。
投手起用にも見えるマネジメント力
投手についても、過去2年同様、コンディションを第一に考えた起用で、最後までブルペンには余力が感じられた。基本的に3連投はなく、優勝前日の19日の試合は、それまで2連投していたリリーフの宇田川優希、山﨑颯一郎をベンチから外した。休養を得てフレッシュな2人が、20日の試合はリードを奪った後の8回、9回を鮮やかに締めた。