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故郷の益田競馬場は休止、落馬事故で生死の境をさまよい「目が覚めたら病院でした」…不屈の名手・御神本訓史42歳が歩む波瀾万丈の騎手人生
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byNumber Web
posted2023/09/17 17:02
2023年、ミックファイアとともに南関東三冠を制した御神本訓史。“天才”とも称される42歳に、波瀾万丈の騎手人生を振り返ってもらった
「ミックファイアもヒーローコールもマンダリンヒーローも、JRAから降りてきた馬ではなく、南関東の“生え抜き”ですからね。そう考えると、こっちのレベルもかなり上がってきているんだな、と感じますよね」
「もう少し乗っていたいし、乗らなきゃいけない」
御神本は馬に対して非常に謙虚だ。「お前のことはわかっているよ」という接し方ではなく、馬の声に真摯に耳を傾けている。そんな彼は、自分の騎手としての強みはどんなことだと考えているのだろうか。
「あまり馬にストレスをかけないように乗るのは、ほかの人よりできるかもしれません。もちろん、綺麗に乗ることはいつも意識しています。憧れたのは、ケント・デザーモやフランキー・デットーリといった外国人騎手でした。綺麗だし、カッコいいな、と思います」
傍から見ていると、ハートの強さや冷静さも武器だと思えるのだが、どうなのか。
「それは意識しているところじゃないけど、いろんな経験をさせてもらっているぶん、引き出しは多くなっているのかな。確かに、あまり自分を見失うことはないですね」
今なおピークとはいえ、年齢は42歳。いつまで現役をつづけるか、考えることはあるのだろうか。
「もう42歳で、後輩たちがどんどん調教師に転身しているのを見ると、はたして自分はこのままでいいのかな、と思うこともあります。それでも、もう少し乗っていたいし、たぶん乗れるし、乗らなきゃいけないとも思います。前にできたことができなくなったとか、衰えを感じることはないですが、一線級で戦えるだけの技術とか、体力とか、メンタルを保持していくにはどうしたらいいのか。そこは結構考えながら乗っています。(67歳で現役の)的場文男さんは、今でも勝つからすごいとは思いますが、別格なので目指すところではないですね(笑)。期待してくれる人がいる限り、これからも一生懸命、乗りつづけるだけです」
見てのとおりの男前で、馬上にいても、馬を下りても絵になって、華がある。
ミックファイアとのコンビで、次はどんなレースを見せてくれるのか。10月1日のダービーグランプリはもちろん、その先の未来も楽しみでならない。
<前編からつづく>