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故郷の益田競馬場は休止、落馬事故で生死の境をさまよい「目が覚めたら病院でした」…不屈の名手・御神本訓史42歳が歩む波瀾万丈の騎手人生 

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島田明宏

島田明宏Akihiro Shimada

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posted2023/09/17 17:02

故郷の益田競馬場は休止、落馬事故で生死の境をさまよい「目が覚めたら病院でした」…不屈の名手・御神本訓史42歳が歩む波瀾万丈の騎手人生<Number Web> photograph by Number Web

2023年、ミックファイアとともに南関東三冠を制した御神本訓史。“天才”とも称される42歳に、波瀾万丈の騎手人生を振り返ってもらった

一時は騎手免許失効「迷惑をかけてしまった」

 翌2014年も219勝でリーディング2位という成績を残したが、2015年の5月末から2017年3月末まで、自らの不祥事のため騎手免許が失効してしまう。その間は調教厩務員として馬に乗りつづけ、日々の業務をこなしながら騎手試験の準備をしていた。

「あの時期があったから、今の自分があるのだと思います。やっぱり、いろいろ考えさせられたこともありましたし……」

 稽古をつけたバルダッサーレがほかの騎手の手綱で2016年の東京ダービーを制した。そのときはどんな思いだったのか。

「嬉しかったですよ。自分が携わった馬が勝ってくれたわけですから。騎手免許がなかったあの期間に、悔しく感じたことはなかったです。自分のしたことが原因で、迷惑をかけてしまいましたので。それでも、また免許試験を受けられるチャンスがもらえるだけでもありがたいと思い、一生懸命やっていました。師匠の三坂先生をはじめ、引き立ててくれる人たちがいて、支えてくれました」

 2017年4月に騎手免許を再取得。8月に復帰すると、1割台がつづいていた勝率が、益田で乗っていたころ同様、2割台に跳ね上がった。

「復帰してからは、それまで以上に、1頭1頭、大事に乗りました。レースと馬にしっかり向き合っていかなければいけない、と。数字はあまり気にしないのですが、勝率が上がったのは、いい馬に乗せてもらう機会が増えたからだと思います」

 2019年、ブルドッグボスでJBCスプリントを優勝。2020年からはフェブラリーステークスに4年連続参戦している。もし来年、ミックファイアで参戦すれば、1999年に同レースで地方馬による唯一のJRA・GI勝ちを果たしたメイセイオペラ以来の勝利はなるかと盛り上がるだろう。

「まだ古馬のトップクラスと差はあると思いますが、これからどんどん強くなって、そのくらいまで行ってほしいですね」

 ミックファイアをはじめ、今年の南関東の3歳勢はハイレベルなだけに、南関東勢同士の戦いも楽しみだ。この世代の強さをいち早く「世界」に示したのは、マンダリンヒーローだった。4月8日にアメリカ西海岸のサンタアニタパーク競馬場で行われたダート1800mのGIサンタアニタダービーで、鼻差の2着と健闘した。

 そのマンダリンヒーローをヒーローコールは3度負かしており、ミックファイアはヒーローコールを2度完封している。

【次ページ】 「もう少し乗っていたいし、乗らなきゃいけない」

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