酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
「阪神のARE=アレ」と「おーん、そらそうよ」寛大な関西人・岡田彰布監督は「審判への抗議」も公益のため…一流の野球人なワケ
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byHideki Sugiyama
posted2023/09/15 17:22
11連勝フィニッシュで18年ぶりのセ・リーグ制覇。阪神タイガースの熱狂をもたらしたのは岡田監督の采配だった
岡田監督は「走路やベースが塞がれてるのに、走者はどこに触れればええのや」と抗議をした。
現行のルールでは、物理的にベースに触っていなければアウトだが、野手が完全に塁をふさいで触塁の余地をなくすのは、走者に不利益ではないかということだ。
岡田の抗議は自軍が不利な判定をされたからクレームをつけたというのではなく、ルールの欠陥について指摘したものだった。
9月4日に12球団とNPBは塁のブロッキングに関するルールの運用変更を決めた。状況によっては走者の不利益を取り除くために「ブロッキングベース」というルールの運用変更をすることにした。
「公益に資するための提言ができる」一流の野球人
岡田は「私心」ではなく「公益に資するための提言ができる」一流の野球人でもある。それだけに、相手チームや選手を貶めるような一部ファンの言動は、残念なことではある。阪神球団も注意喚起したし、岡田彰布監督もそうしたファンの行動を喜んではいないだろう、とも感じる。
夏になってから、京セラドームや阪神甲子園球場の阪神戦のチケット購入がほぼできなくなった。阪神戦は連日満員となっている。昔懐かしい「ダフ屋」も出始めた。
優勝が近づいてから、また道頓堀川にファンが飛び込むのではないかと、警察や地域の人々が警戒し始めた。何と今年は、京都、鴨川でも飛び込む人がいないか警戒したそうだ。なお昨年はオリックスの優勝の際に、道頓堀川に飛び込まないかと警戒網が敷かれたが、ただの一人も飛び込まなかったという。
なにかと「経済効果」を算出してしまう関西大学・宮本勝浩名誉教授によると、今年のAREの経済効果は、関西地域において、約872億2114万円とのこと、大谷翔平が活躍したWBCは約654億3329万円だからこれを上回るとのことだ。
日本一の“ソレ”は「決めてないんよ」
岡田監督は6回宙に舞った。飄々とした優勝監督インタビューも実に味があった。
「一応今日でAREは封印して、みんなで優勝を分かち合いたい」
「AREを決めたのはリーグ優勝までだったんで(次の言葉は)決めてないんよ」
どこまでも飄々とした指揮官だった。
狂騒曲はこれから始まるだろうが、「アレまでしか考えてなかったですが、日本一に代わる言葉を教えてもらいたいですね」と語るなど、鷹揚で器の大きな岡田彰布監督がもたらした優勝だ。阪神ファンも、昔とは一味違った喜び方をしてもらいたいものだ。
「そらそうよ、AREできたから言うて、威張り過ぎたらあかんよ。おーん」
騒ぎすぎるのは「おーん」知らずよ!