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「決めればヒーロー、でも外したら…」ラグビーW杯伝説のキッカーはなぜ松田力也の笑顔にホッとした? イングランド戦“理想の展開”も解説
text by
大西将太郎Shotaro Oonishi
photograph byKiichi Matsumoto
posted2023/09/15 17:00
キッカーが背負うプレッシャーを知る大西将太郎氏は、SO松田力也の復調を大いに喜んだ
とはいえ、キッカーがずっと成功を続けることは難しい。今のところ成功率100%だがいずれ外すタイミングがくる。大事なのは外した後のキックだ。ショックもあるし、緊迫の試合展開なら焦りも生まれるが、求められるのは失敗を続けないメンタリティー。イングランド戦ではいかに割り切れるかもポイントになる。
イングランドはアルゼンチンとの初戦で、開始早々に退場者を出す厳しい展開だった。しかし、ペナルティキック(相手の反則によって与えられるキック=3点)や、SOジョージ・フォードによるドロップゴール(インプレー中に球をワンバウンドさせてボールを蹴るプレー=3点)で競り勝った。近年はボールを動かすエキサイティングなラグビーを志向していたが、これぞイングランドというノートライでの勝利。おそらく15人だったとしてもドロップゴールを狙っていたと思うような“らしさ”がでた80分だった。
日本戦でもキックでスコアを先行していくことが予想されるだけに、大事になるのはキャッチアップすること、つまり「ついていく」。たとえ主導権を握られていても点差を必要以上に離されないことだ。ラスト10分でリードされていても、7点差ならチャンスがある。得点機会は限られているだけに、キックを狙えるところではスコアを重ねたい。だから、それを迷いなく選択できる力也の復調は大きい。
「力也がスコアを重ね、最後はマツがトライ」
FWの消耗戦も予想されるため、ジェイミー・ジョセフHCはベンチにFW6人を配置するかもしれない。となると、BKはSHとユーティリティのレメキというプランもありえる。SH齋藤直人らもキックの練習を重ねているが、この展開になればキッカー松田力也に懸かる期待は大きい。
もう一人、キーマンを挙げるとすれば大会前にも推した松島幸太朗だろう。フランスでの知名度は高く、トライを決めればチームだけでなくスタジアムが沸く。しかもフランス人はイングランドを敵視する歴史があるだけに、試合展開によっては日本を後押しするムードになるかもしれない。
ミスやペナルティを減らし、我慢を重ね、力也のキックでスコアを積み上げる。そして、最後はマツ(松島)のトライで逆転する。ロースコアゲームになればそんな展開も見えてくる。課題はあるが、チームは上昇傾向。チリ戦の後のような笑顔をまた見たい。
〈予選プール2戦目、イングランド戦は日本時間9月18日(月)朝4時キックオフ〉