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「追いつけない自分が悔しかった」“静かなるエース”宮浦健人が明かしたライバル西田有志への本音…躍進続く男子バレー〈エリートの逆襲〉 

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田中夕子

田中夕子Yuko Tanaka

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photograph byYuki Suenaga

posted2023/09/07 11:16

「追いつけない自分が悔しかった」“静かなるエース”宮浦健人が明かしたライバル西田有志への本音…躍進続く男子バレー〈エリートの逆襲〉<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

ネーションズリーグでは不調に喘いだ西田有志に代わり、大車輪の活躍だった宮浦健人

 覚醒した宮浦に対し、「自分を外してほしい」とまで思い悩んでいた西田はどうか。ネーションズリーグ予選ラウンドのフィリピン大会は「どん底だった」と振り返るほど苦しんでいた。終盤のイタリア戦でようやくサーブの感覚をつかみ始めるも、準々決勝のスロベニア戦直前に腰を痛め、ファイナルラウンド3試合はユニフォームを着てコートに立つことすらもかなわなかった。普通に考えれば、落ち込まないはずがない。

 だが、「どん底」からさらに落ちた先で、西田は絶望ではなく浮上につながる新たな気づきを得た。

「もう俺はいいわ、って折れかけていた時に、メンタルの専門家の方と話す機会をいただいたんです。自分では整理しきれなかったところを一から話すうちに、いろんなことがスッと腑に落ちるというか、スッキリしたんです。宮浦さんがすごいのはずっとわかっていたのに、いつの間にか自分が出て、勝てるんだ、っていうのがどこか当たり前になっていた。でもそこで宮浦さんにやっぱりこの人はすげー、っていう姿を見せつけられて、わかっていても認められなかったんです。自分の中にもプライドがあるから、うまくいかない時は『こんなの自分じゃない』って。

 だけど、思うようにいかないこと、できていない自分を全部受け入れて、認めるようにしたら、気持ちが切り替わった。思い返したら、高校時代もユースでも僕は負けることしかなくて、うまくいかないこともたくさんあるのが普通で、今も同じ。うまくいかないからこそ『あ、これが俺だ』と思えて、むしろ懐かしい感じ。やっと、(靄が)晴れました」

「宮浦さんも僕も小さいけど、世界には絶対負けない」

 ネーションズリーグの閉幕から1カ月。休むことなく、8月19日から26日にはイランでアジア選手権が開催され、アウェイの洗礼を受けながらも日本は3大会ぶりに頂点へ立った。決勝で両チーム最多の15得点を叩き出した西田は、自身のⅩ(旧Twitter)で優勝の喜びと「ただいま」の言葉と共に、こう綴った。

『上手くいかない時が長く続いてたが、もがく事を辞めず、みんなに信用してもらい、結果を出す。この時のための努力だと身に沁みて感じました(抜粋)』

 努力を重ね、訪れる“いつか”のために備える。喜びだけでなく、悔しさも糧にしながら強くなるのは、西田だけでなく宮浦も同じだ。

 だからこそ、西田が言った。

「戦う相手は世界なんで。宮浦さんも僕も身長は小さいかもしれないけど、絶対負けないし、190と186の2人で、お互い切磋琢磨してより高いレベルになっていく。(世界の)2mには負けないっすよ、絶対」

 日本には西田がいて、宮浦がいる。五輪予選、上等だ。待ってろ、世界。

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「もう俺はいいから外してくれ」西田有志が涙の直談判…男子バレー歴史的快挙のウラで豪快エースが苦しみまくった理由「イップスみたいな状態」

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