バレーボールPRESSBACK NUMBER

「追いつけない自分が悔しかった」“静かなるエース”宮浦健人が明かしたライバル西田有志への本音…躍進続く男子バレー〈エリートの逆襲〉 

text by

田中夕子

田中夕子Yuko Tanaka

PROFILE

photograph byYuki Suenaga

posted2023/09/07 11:16

「追いつけない自分が悔しかった」“静かなるエース”宮浦健人が明かしたライバル西田有志への本音…躍進続く男子バレー〈エリートの逆襲〉<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

ネーションズリーグでは不調に喘いだ西田有志に代わり、大車輪の活躍だった宮浦健人

 目の前に掲げた目標をクリアすべく、諦めず、ひたむきに努力する。昨年、単身渡ったポーランドでの日々も同じだった。

 全日本インカレ4連覇を成し遂げた早稲田大を卒業後、ジェイテクトSTINGSでは1年目から攻撃の中心として活躍したが、西田の復帰を機に海外挑戦を決めた。石川祐希や高橋藍がプレーするイタリアリーグと共に世界最高峰リーグの1つでもあるポーランドを選択し、さらなるレベルアップを求めた。

 宮浦が所属したニサには、同じオポジットにチュニジア代表で東京五輪にも出場したワシム・ベンタラがおり、練習時から毎日本気でぶつかり合った。

「ただの練習なんですけど、うまくいかないとへこむし、クソ、という気持ちで。ベンタラ選手も負けん気が強いので、僕がよければ彼も“俺がトップだ”という気持ちで向かってくる。だから練習から常に本気だったし、どうすれば彼に勝てるか。決められるかをずっと考えていました。西田選手も僕にとっては同じです。もっと自分が成長して上に行くために、常に追いつきたいと思う存在が西田選手や清水(邦広)選手で、見るたび刺激や学びしかなかったし、正直に言えば追いつけない自分が悔しかったんです。だから今、同じステージに立つ以上は負けたくないし、僕だけではなくお互い『俺が勝つんだ』という気持ちがある。むしろ今まで以上に強くなりました」

 そんな日々を経て掴んだのがネーションズリーグのチャンスだった。躍動する宮浦は30年ぶりの勝利を収めたブラジル戦、イタリアとの3位決定戦でもフル出場を果たし、スパイクやサーブで得点を叩き出すたび、感情を露わに何度も叫んだ。

恩師・畑野監督も喜んだ大活躍

 殻を破れず、もがいていた高校時代を振り返るたび「褒められたことはほとんどない」と宮浦は苦笑いを浮かべる。だが、ネーションズリーグで銅メダル獲得に貢献した活躍を、誰よりも喜んでいたのが鎮西高の畑野久雄監督だった。

「3位決定戦は日本時間の深夜0時。畑野先生はその時間に起きて、テレビで見ていたそうです。勝った瞬間は『思わず手を叩いて喜んだ』って。今までいろんな選手が巣立って行きましたが、先生のそんな姿、そんな話を聞いたのは初めて。宮浦の努力や、寡黙に自分と向き合いながらコツコツ積み重ねることができる彼の人間性を知っているからこそ、ようやく日の目を見たことが畑野先生も本当に嬉しかったんだと思います」(宮迫コーチ)

【次ページ】 どん底の西田を救った宮浦の存在

BACK 1 2 3 4 NEXT
宮浦健人
西田有志

バレーボールの前後の記事

ページトップ