ネイマールと親交があるジーコは、「彼なりの考えがあってのことなのだろう。まだ31歳で、これからもセレソンのために頑張ってほしい。彼ならきっとできる」とエールを送る。1994年W杯の優勝メンバーで、現在はテレビ解説者の元ブラジル代表MFジーニョは、「最近、彼に関する話題の多くは（女性問題など）ピッチ外の事柄が多い。今後は、フットボールに集中してもらいたい」と注文を付けながらも、応援している。

2012年、ジーコが当時イラク代表監督を務めた際、ブラジル代表戦にて　©Getty Images

　最近、30代も半ばを超えたスーパースターが欧州以外のクラブへ相次いで移籍し、世界中のファンを驚かせている。

　ポルトガル代表FWクリスティアーノ・ロナウド（38）はマンチェスター・ユナイテッド（イングランド）からアルナスル（サウジアラビア）へ、アルゼンチン代表FWリオネル・メッシ（36）は今年7月にPSGからインテル・マイアミ（MLS）へ――。しかし、ネイマールはまだ31歳だ。メッシのように、W杯でチームを優勝に導いて国民的英雄となっているわけでもない。

PSGサポに自宅の前で「出ていけ」と叫ばれた日

　近年、故障が異常に多く、重要な試合に欠場したり精彩を欠くことが非常に多い。このことについて、多くのPSGサポーター、ブラジルのメディアと国民は「常日頃の節制が足りないからではないか」という疑念を抱いている。

　入団当初は大歓迎したPSGのサポーターは愛想を尽かし、今年5月、パリ市内の彼の自宅を取り囲んで「出ていけ」と叫び続けた。この一件で、ネイマールは自分が愛されていないことを痛感した。さらに、PSGのルイス・エンリケ監督が彼を今季の戦力として考えていないことを知り、PSG退団を決意したようだ。

PSGでのネイマール　©Takuya Sugiyama

　当初は、古巣バルセロナへの復帰を目論んだらしい。しかし、かつてのチームメイトだったシャビ監督が「戦力としてはプラスになるが、チームの雰囲気を乱しかねない」と考えて拒絶したとされる。ネイマール・サイドはマンチェスター・シティ、マンチェスター・ユナイテッド、チェルシー、レアル・マドリーなどへ売り込んだとされるが、彼の獲得を熱望したクラブはなかったようだ。

　このような状況で、他クラブではまず望めない金額の報酬を受け取れ、周囲からのプレッシャーが少なく、家族との生活も楽しめるアルヒラルへの移籍は、本人にとっても悪くない選択だったのだろう。

ペレに並ぶ代表最多得点なのに英雄になれない理由

　セレソンでペレと並ぶ歴代1位の通算得点記録（77点）を持つ傑出したアタッカーであり、本来なら国中の人から敬愛されていてもおかしくない。そうなっていないのは、2014年以降、W杯3大会に出場しながら、一度も優勝していないからだ。

　評価を上げるには、2026年のW杯で初の戴冠を実現するしかない。しかし、「今回のアルヒラル入りで、その可能性が遠のいた」というのが母国の多くの人々の印象であり、だからこそ強い批判を浴びているのである。

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