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野ボール横丁BACK NUMBER
「居酒屋で絡まれて…」高校野球を離れた名将が語る“負けたら叩かれる”強豪監督の現実…ズバリ考える「甲子園は本当にいらないのか」
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byKei Nakamura
posted2023/08/27 11:01
かつて高知高校の監督として、同校を9度甲子園に導いた島田達二氏
島田 こちらの弱点を突いてくるんですよ。このバッター、インコースを攻められると辛いんだよなと思っていると、ちゃんとそこに投げてくる。他のチームは、自分たちの得意な野球をやってくるんです。相手を見るのではなくて、自分たちの良さを出そうとする。バットをぶるん、みたいな。そういう野球は、対応しようと思えばできるんです。でも明徳はどんなに小さな隙も許してくれないような怖さがありました。
――馬淵さんは明徳の監督になってから30年以上、勝ち続けている。しかも、全国でも成績を残しています。なかなかいないですよね。この前、馬淵さんは70歳で監督を辞めると話していたのですが。
島田 えっ? 70に延びてるんですか。その前はずっと65までと言っていましたけど。
高校監督の打診も…断った理由
――そこへ行くと、島田さんは、まだ51歳と若いですから他の高校から声がかかることもあるのではないですか。
島田 ゼロではないですけど。でも、ありがたいなと思いつつも、お断りしました。せっかく高校野球を客観的に見られる立場になったのに、監督になったら、また、どっぷり浸かってしまうので。そうなると、また高校野球のことで頭がいっぱいになってしまう。今は高校野球の外で野球を学ぶことを優先したいんです。
――高校野球は、そこが難しいんでしょうね。引力が強過ぎて、ほどよい距離感で関わることができないというか。
島田 そもそも、どっぷり浸からなきゃ高校野球の監督ってできないと思いますよ。だから、変な監督もいっぱいいますもん。そうはなりたくないですけど、その覚悟がなかったら選手にも失礼になる。
――誘いがあったというのは高知の高校ですか?
島田 いや、違います。でも、馬淵さんから電話があって「おまえ、断ったらしいな」と言われました。野球界なんて狭い世界なので、何でも筒抜けなんですよ。