背番号「13」で放ったホームラン

「あの時期、実は中正は、お父さんが病気で倒れてしまったり本当に大変だったんです。そんな中でも、とにかく必死で練習に取り組んでいましたよ。自分がスペシャルな存在だとは決して思っていなかったけれど、周りからそう見られがちだと理解した上でどう立ち回るべきかをちゃんと分かっていた。明るくて前向きでしたしね。彼の人柄を知っているから、彼のことを悪く言うチームメートはいませんでした」

　最後の夏、直前の最終登録で万波は南神奈川大会のメンバー入りに滑り込みを果たす。背番号は「13」だった。そして準々決勝の立花学園戦では、横浜スタジアムのバックスクリーンにぶち当てる特大の2ランホームラン。決勝の鎌倉学園戦では、レフト最上段に高校通算40号となる特大のアーチを突き刺して甲子園への切符をつかんだ。

「あのホームランは本当に凄かったです。打った瞬間に分かりました。やっとだな、と僕は本当に安堵しました。中正も3年間で一番嬉しそうな顔をしていた。最後の最後に彼の調子が戻ってきて、これなら甲子園でも上を狙える、そう思っていました」

平田監督の金足農・吉田対策

甲子園の舞台に登場した万波　©JIJI PRESS

　青年監督が重責を引き継いで迎えた3年目。思い入れのある“第1期生”の、晴れ舞台でもあった。甲子園の初戦は愛知産大三河に7－0と完勝。続く花咲徳栄も8－6で下した。万波はこの2試合で計9打数無安打。ベスト8入りをかけて迎えたのが、あの金足農業戦だった。

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