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ダルビッシュ有は野茂英雄を“超えた”のか? メジャー日本人最多「1919奪三振」までの道のり…苦しむダルに野茂がかけた“ある一言”の凄み
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph byGetty Images
posted2023/08/20 17:00
野茂英雄を超える「1919」奪三振を記録したダルビッシュ有
「あかん。投げさせてもらえなくなる」野茂の決意
日本時代の彼を思い起こせば、180球完投も当たり前。だが、メジャーに戦いの場を移せば、100球前後で6回以上をまとめなければ先発投手としての立場を失う。カージナルス戦後、野茂が意を決したかのように言った。
「あかん。ストライクを投げないと投げさせてもらえなくなる」
97年のシーズン後に右肘の遊離軟骨除去手術を受けた影響で翌年はメカニックが崩れた。再び制球難に陥った。それでも99年に彼は立て直した。
自身の経験上、投げやりな意味で「そんなの仕方ないやん」と言ったのではないはずだ。“考え過ぎるな。自分をあまり追い込むな”の意味に近いように感じる。
ダルビッシュと野茂の“現在の関係性”は…
ダルビッシュはその後も経験豊富な先輩に助言を求めた。今春、WBC出場で通常のキャンプ調整ができず、キャンプ合流後は必死に溝を埋めようとしていた。その際も野茂は温かく見守っていた。自ら思うことを伝えるのでなく、見て、感じて、理解し、相談を受けた時点で適切な助言を送る。そんな姿にダルビッシュは優しさを感じていた。
現在、奪三振率ではダルビッシュが10.7で野茂の8.7を大きく上回る。今季の直球の平均球速は94.7マイル(約152.3キロ)。16日に37歳になった投手とは思えない球速とキレがある。野茂が持つ日本人投手最多の123勝まではあと20勝。尊敬してやまない先輩とともに、その先輩が残した記録へ挑むことが許されるダルビッシュは幸運な野球選手だと感じる。日本人投手の頂点を極めることが先輩への最大の恩返しとなる。
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