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ダルビッシュ有は野茂英雄を“超えた”のか? メジャー日本人最多「1919奪三振」までの道のり…苦しむダルに野茂がかけた“ある一言”の凄み
posted2023/08/20 17:00
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph by
Getty Images
メジャーリーグのマウンドへ上がった日本人投手はこれまでに49人を数える。その中で投手の勲章とも言える勝利数、奪三振数でいずれもトップに君臨してきたのは先駆者・野茂英雄だった。彼は道を切り開いただけでなく、後へ続く者に道標を残した。その偉大なる先人の記録をついにダルビッシュ有が超えた。
8月14日、サンディエゴ。渾身の力を込め投じた95.2マイル(約153.2キロ)の直球にオリオールズ・ウリアスのバットが空を切った。野茂が築き上げた1918個の三振を上回る日本人最多の1919奪三振。ダルビッシュは先輩への敬意を込め、コメントを残した。
「うれしいですね」
このとき、野茂氏は場内の球団ブースから後輩の偉業を見守っていたと聞く。2021年にダルビッシュがパドレスに移籍してから、ふたりは球団アドバイザーと現役投手の関係に変わり絆を深めている。ダルビッシュが残したこんなコメントからもそれは窺える。
「(野茂さんとは)2007年から交流があり、明るく、優しく、いろんなことを教えてくださる。今も昔も信頼できる方」
不思議と重なり合う、ダルと野茂の成績
ふたりの経歴、実績は、不思議と重なる部分が多い。海を渡ったのは野茂が26歳、ダルビッシュが25歳。日本球界で残した実績は野茂が5年78勝、1204奪三振、ダルビッシュは7年93勝、1250奪三振。在籍年数が長い分、通算成績はダルビッシュが少し上回る。
メジャーでは実働12年で123勝を築き上げた野茂に対し、ダルビッシュは実働11年目の現在、103勝を残している。
一方で投手としてのスタイルの違いは明白だ。直球とフォークボールのほぼ2つの球種だけを投げ込んだ先輩とは対照的に、後輩は11もの球種を操る多彩さを誇る。ダルビッシュは奪三振で上回った後、自身のSNSであらためて尊敬の念を表した。
「昨日の試合で野茂さんが持つMLBでの日本人最多奪三振記録を塗り替えることができました。 野茂さんはほとんどストレートとフォークのみでの記録なので改めて偉大さを感じました」