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「小3の藤井聡太くんを大泣きさせた」伊藤匠20歳が竜王戦挑戦者に「その度に自分が情けなく思えたが…」17歳時の予言とは〈滝藤賢一似も話題〉
posted2023/08/19 11:00
text by
田丸昇Noboru Tamaru
photograph by
日本将棋連盟
第36期竜王戦の挑戦者決定三番勝負第2局が8月14日に行われ、伊藤匠六段(20)が永瀬拓矢王座(30)に勝って2連勝した結果、藤井聡太竜王(21=名人・王位・叡王・棋王・王将・棋聖を合わせて七冠)への挑戦権を得た。激闘が繰り広げられた永瀬-伊藤戦、スリルあふれる戦いとなった昨年の棋王戦の藤井-伊藤戦、伊藤新七段(竜王戦挑戦で昇段)のプロフィールなどについて、田丸昇九段が解説する。【棋士の肩書は当時】
タイトル経験者、A級棋士を次々と撃破した
伊藤六段は今期竜王戦の5組ランキング戦で、石田直裕五段、井上慶太九段、服部慎一郎六段らに5連勝して優勝し、決勝トーナメント(計11人)に進出した。前期竜王戦では6組ランキング戦で優勝し、決勝トーナメントで佐々木大地七段、大橋貴洸六段に勝って3回戦で敗れた。
伊藤は今期竜王戦の決勝トーナメントで、出口若武六段、大石直嗣七段、広瀬章人八段、丸山忠久九段、稲葉陽八段(前期3回戦の相手)の順に勝ち、若手精鋭、タイトル経験者、A級棋士らを連破した。そして、挑戦者決定三番勝負で永瀬拓矢王座と対戦した。
伊藤六段は三番勝負第1局を迎えた時点で、公式戦で永瀬王座に2連勝していたが、藤井竜王・名人に次ぐ実力者である永瀬の壁は厚いと思われた。
第1局の戦型は角換わり腰掛け銀。先手番の伊藤は中盤で敵陣に角を打って捨てる強手で攻め込み、永瀬の反撃を手堅く受けると、最後は相手玉を鮮やかな即詰みに討ち取った。
第2局の戦型も角換わりで、後手番の伊藤が採った作戦は受け身の右玉。伊藤は中盤で一方的に攻め込まれたが、機を見て反撃に転じた。激しい寄せ合いとなった終盤で、永瀬は▲5三銀と打てば勝ち筋になる順を逃した。それでも竜・飛・馬・成銀で厳しく迫り、伊藤の玉はかなり危険だった。しかし、伊藤は永瀬の10手以上もの連続王手をきわどくしのいで勝った。終局後に勝ちを指摘された永瀬は、「そうか、銀かあ……」と呻いたという。
「常に藤井竜王を追いかけてきたので…」
伊藤六段は永瀬王座との三番勝負を制して、藤井竜王への挑戦者になった。棋士3年目で竜王戦挑戦は最も早く、現行制度で5組からの挑戦は初めてだ。
伊藤新七段は終局後の記者会見で、次のように語った。