マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
現役球児に聞いてみた“甲子園改革”へのホントの思いは…?「本当に暑さを感じるのは夜、寝るとき」「『オレ、京セラ出たんだよ』じゃ…」
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byNanae Suzuki
posted2023/08/17 11:00
今年も酷暑の中の開催とあって、様々な「提言」が噴出した甲子園。では、実際に現場の球児はどう考えているのだろうか?
夏の試合の夜は、いつになっても体がカッカとほてった。あの頃はスパイクが黒だったので、足が熱くむくんでいた。天井から垂らしたヒモに足をゆわいて、足を高くして寝たものだ。
焦れば焦るほど寝られない。寝不足を怖れる思いは痛切である。
「甲子園は、僕が知っている場所の中で、断トツに一番素晴らしい所でした。ほかに表現できません」
B君は甲子園球児だ。レギュラーでバリバリ活躍……というわけにはいかなかったが、それでも「高校球児の中で最高の幸せ者です!」と言いきる。
「外野の芝生なんて、フワフワで、フカフカで。甲子園ってダイビングキャッチとかすごい多いじゃないですか。あれ、気持ちすごくわかります。ライトのヤツなんて『あの芝生、食える』って、こっそり食ったらしいです(笑)。今、『甲子園じゃなくて、ドーム球場でやったら』とか言われているらしいですけど、たぶん『全国』が甲子園じゃなかったら、自分はあの猛練習に耐えられなかったと思います」
「厳しい条件で頑張るからこそ価値がある」
同じような感想を語ったC君も甲子園球児。C君はレギュラーとして活躍しただけに、表現もちょっと激しかった。
「暑かろうが、足がつろうが、『甲子園で死ぬんだったら本望』ぐらいの気持ちでやっていましたから。確かにめちゃめちゃ暑かったけど『もっと涼しい時期にして欲しい』とか『ドームが良い』とか、誰もそんなこと言わなかった。というか、思いもしませんでした。厳しい条件で、ギリギリのところで頑張るからこそ価値がある。甲子園で経験したことは、野球の経験だけじゃなくて、暑さや疲れとの闘いも含めて、選ばれた者だけが経験できる勲章だと思っています」