マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
現役球児に聞いてみた“甲子園改革”へのホントの思いは…?「本当に暑さを感じるのは夜、寝るとき」「『オレ、京セラ出たんだよ』じゃ…」
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byNanae Suzuki
posted2023/08/17 11:00
今年も酷暑の中の開催とあって、様々な「提言」が噴出した甲子園。では、実際に現場の球児はどう考えているのだろうか?
「松井(秀喜・元巨人ほか)さんとかいろんな人が改革案を出していますけど、みんな有名になったから優等生的なこと(失礼!)を言っているだけで、自分たちが高校野球をやっていた頃に本当に同じように考えたのかな、という疑問はあります」
D君の高校は、いつも「1回戦ボーイ」だった。夏は2試合以上やったことがない。それがD君の「自慢」だという。そんな弱いチームなのに、野球を辞めようと思ったことなんか、一度もなかったという。
「有名人の言葉では、石橋(貴明、とんねるず)さんの『オレ、甲子園出たんだよは、最高の自慢になる』が、いちばん刺さりました。それが『オレ、京セラ(ドーム)出たんだよー』じゃ、『へぇー』で終わっちゃう。高校生ぐらいだと単純に自慢したい気持ちも強いですから、やっぱりドームで全国大会やっちゃったらそれは『甲子園』じゃない。僕なんか弱いチームでしたけど、それでも親や友だちに『甲子園目指しているんで!』って言えるのが誇りでしたから」
これまで培われてきた「甲子園」という夢舞台
回答の順番に「強調」の意図はない。彼らに訊いた順番だ。訊いてみて、驚いた。これだけの、球児たちの「見解」が埋もれていた。
決定打はないかもしれないが、「夏の甲子園大会」が、今以上に高校球児たちのためになるヒントが、いくつも隠れているようにも思う。
総じて言えることは、やはり高校球児の憧れは「全国大会」ではなく「甲子園」にあるということだ。
もちろん近年のこの酷暑の中のプレーは、未来ある球児たちにリスクがあるのは事実だ。だからこそ、今大会のクーリングタイム導入など、大会側も様々な試行錯誤を繰り返している。どうすれば100年以上続いた聖地での大会を継続できるのかを真剣に考えること。それこそが、高校球児のためにもなるのだろう。
識者と称される方々の意見も貴重であろうが、実際に「高校球児」としての時を過ごしている者たち、ちょっと前に体感したばかりで、いまだ記憶生々しい球児OBのフレッシュな声に耳を傾けることが、実はいちばんの「急がば回れ」になるように思えてしかたがない。
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