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合宿中に強盗被害、16-17xサヨナラボーク…甲子園出場、おかやま山陽監督はジンバブエ代表監督として東京五輪を目指していた! 知られざる“アフリカ予選”激闘録 

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堤尚彦

堤尚彦Naohiko Tsutsumi

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photograph byTokyo News Service,Ltd.

posted2023/08/17 06:03

合宿中に強盗被害、16-17xサヨナラボーク…甲子園出場、おかやま山陽監督はジンバブエ代表監督として東京五輪を目指していた! 知られざる“アフリカ予選”激闘録<Number Web> photograph by Tokyo News Service,Ltd.

この夏2勝を挙げたおかやま山陽の堤尚彦監督。実は4年前は東京五輪を目指し、ジンバブエの指揮官としてアフリカ予選を戦っていた

 参加者の1人であるピカ・コレンは、おかやま山陽の投球ドリルでメキメキと成長し、まだ肌寒い気候の中、最速130キロを突破、日本のプロ選手並みの回転数2460をたたき出した。生活面では、乳酸菌飲料の「カルピス」にドハマりし、最後は原液をそのまま飲むという豪快さを見せていた(美味しいのか?)。

 2019年4月15日。野球部は新入部員を迎え、学校としても新年度のスタート直後。野球部、学校関係者には多大な迷惑をかけたと思うが、皆に快く送り出していただき、半年ぶりにジンバブエの地に降り立った。

 1週間の直前合宿を終え、5月からいよいよ予選がスタート。余談だが、開幕前日に設けられた会議の開始直前、時差が7時間あるジンバブエは4月30日だが、日本は日付が変わり5月1日に。平成が終了、新元号の令和が幕開けする歴史的瞬間を、私はジンバブエで迎えた。ちなみに“ミレニアム”に沸いた2000年がスタートする瞬間はガーナのトイレにおり、歴史の変わり目に日本にいない男なのだと、つくづく感じた。

「ジンバブエの鈴木雅之」が好投

 もともと東京五輪のアフリカ予選は、ブルキナファソ、ナイジェリア、ウガンダ、ケニア、南アフリカ、そしてジンバブエの6カ国で開催される予定だったが、ナイジェリア、ケニアが資金不足などを理由に直前で不参加に。対戦カードも急きょ変更され、我々ジンバブエの相手はブルキナファソに決定した。

 先発を任せたのは、左投手のクリフ・シャネ・ジェレ・ビンティ。ピカとともに直前の日本合宿に参加した1人で、元々のオーバースローからサイドスローに転向し、制球力が大幅に向上していた。歌手の鈴木雅之を思わせる細面で、私は「ジンバブエの鈴木雅之」と呼んでいた。このクリフが緩いボールを武器にブルキナファソをいなし、5回を自責点1にまとめた。打線もつながり、11対5で快勝。格上と目されていた相手を下したことで、現地メディアにも「Big Upset(大番狂わせ)」と報じられた。

ブルキナファソとの3位決定戦

 快調な滑り出しを見せたが、そこからが難しかった。投手陣の制球力、野手陣の守備力といった不安視していた部分が試合を重ねる中で露呈し、開幕戦の勝利以降は3連敗。そして、ブルキナファソとの3位決定戦を迎えた。

【次ページ】 スラム街の出身で、野球に懸けている男

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