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朝倉未来は「格闘技に専念すべき」なのか? 衝撃タップアウト負けで“世界ランク”はフェザー級101位…時代の寵児が直面した“大きな壁” 

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布施鋼治

布施鋼治Koji Fuse

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photograph byRIZIN FF Susumu Nagao

posted2023/08/15 17:03

朝倉未来は「格闘技に専念すべき」なのか? 衝撃タップアウト負けで“世界ランク”はフェザー級101位…時代の寵児が直面した“大きな壁”<Number Web> photograph by RIZIN FF Susumu Nagao

7月30日の『超RIZIN.2』でヴガール・ケラモフに一本負けを喫した朝倉未来。呆然とした表情でリングを去った

朝倉未来は「格闘技に専念すべき」なのか?

 朝倉の敗因については、じつにさまざまな“説”が飛び交っている。そのひとつが急激で過酷な減量だ。朝倉自身、決戦前日の計量までにわずか1日で5.7kgの体重を「水抜き」で落としたことを打ち明けている。過去にも同じようなスケジュールで落としてきているので、朝倉にとってはルーティン通りともいえる減量方法なのかもしれない。

 しかし、朝倉も三十路を超えた。若手時代と比べるとリカバリーに変化があってもおかしくない。実際、5kgの水抜きで「死ぬ思いをした」という選手もいる。最近は水抜きの積み重ねによって、腎臓への負担を懸念する声もある。

 以下は自身も減量に苦しんだ経験を持つ元キックボクサーの証言だ。

「身体のろ過を司る臓器を悪くする一番の原因が脱水症状です。水抜きをしている格闘家は知らず知らずのうちに、この危険な状態を何度も繰り返すことになる。身体の消耗が激しくなるので、引退後までダメージが残る可能性もあります」

 決戦当日の朝倉のコンディションはどれほどのものであったのか。決して不調には映らなかったが、実際のところはわからない。

 またケラモフ戦後には、かつてキックボクシングで一時代を築き上げた魔裟斗が「朝倉は格闘技に専念すべき」と提言し、波紋を広げている。筆者も基本的には魔裟斗の意見に賛同したい。ビジネスと格闘技の“二刀流”は大谷翔平のそれとはわけが違う。あるレベルまでは順風満帆かもしれないが、上のレベルに行けば行くほど“専業”でないと苦しい思いをするのではないか。

 他業種で挑戦を続ける姿勢は買えるが、ならば結果を出すしかない。トップファイターはファンを魅了するパフォーマンスを披露することがマストであり、大前提だ。勝ってナンボ、負ければ発言権すら失うシビアな世界なのだから。

 知っての通り、朝倉はRIZINでもトップクラスのカリスマ性を誇るファイターだ。その発言や行動は大きな影響力を持つ。今回の王座決定戦で戴冠すれば、人気と実力が重なり合う存在になれるはずだった。

 しかし、勝負の世界は厳しい。多くのファンが朝倉の腰に巻かれるものだと期待していたRIZINフェザー級のチャンピオンベルトは、遥か海の向こうにあるアゼルバイジャンに渡ってしまった。

【次ページ】 朝倉未来が直面したファイターとしての“壁”

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