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花巻東・佐々木麟太郎はなぜ“3番打者”なのか?「高校通算140本塁打」を活かす4番打者“佐々木朗希と大谷翔平の後輩”北條慎治とは何者か
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byNanae Suzuki
posted2023/08/14 17:22
大谷翔平を受け継ぐエースナンバー「1」を付ける北條慎治。佐々木麟太郎をおさえて4番に座る打力も一級品だ
まずはピッチャーからレフトへ回った7回。ノーアウト一、二塁のピンチで大飛球をジャンプ一番で捕球すると、同点の8回にも見せ場が訪れる。1アウト満塁のピンチの場面。レフトフライを捕球した北條のバックホームにスタンドがどよめく。ワンバウンドでキャッチャーへ到達する理想的な送球によって、サードランナーを釘付けにし、この局面を無失点で切り抜けたのである。
突然の降雨によって1時間34分もの中断から試合が再開して間もないプレーだっただけに、バックホームの質と同等に集中力も称賛されるプレーであり、その裏に飛び出した千葉の決勝打の呼び水ともなった。
「満塁でしたけど守りやすい状況でもあったので。予想通りのプレーだったというか、『絶対に刺す』と思っていました」
高校野球において、1試合で複数ポジションを守ることは珍しくない。とはいえ重労働には変わりない。「先発ピッチャー」「4番バッター」「レフトフィールダー」。三足の草鞋を履きこなすことについて、北條は「しんどいと思いますけど、練習試合でもよくやるので」とあっさりと答える。
淡々と、しかし、確実に役割を遂行するマルチプレーヤーに対して、監督の佐々木は目を細めながら労をねぎらっていた。
「この試合でもいいピッチングをして、打ってくれて、素晴らしいバックホームもしてくれて。こなすことは難しいと思うんです。普段での練習でもノックには入れたり、入れなかったりするなかで、ああいうプレーができるというのは本人の努力もあるでしょうし、何より責任をすごく感じますよね」
「佐々木朗希の後輩」であり「大谷翔平の後輩」でもある北條
中学は佐々木朗希。
高校は大谷翔平。
偉大なる先人が残した足跡を辿るが、北條はあくまで自分を磨く。
「大谷さんと佐々木さんにはお会いしたことがないんですけど、すごいプロ野球選手と同じ学校なんで刺激にはなりますね」
花巻東は佐々木麟太郎だけではない。
個の献身が光るチーム。
そこに、北條もいる。
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