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「坊主頭自体は問題ではない」髪型自由主義、慶応監督が語る“坊主頭”本当の問題点「『昔からこれが当たり前』という“思考停止”こそ罪深い」
posted2023/08/15 06:00
text by
森林貴彦Takahiko Moribayashi
photograph by
Nanae Suzuki
そのチームを率いるのが、森林貴彦監督だ。小学校のクラス担任も務める森林の教育論を著書『Thinking Baseball ――慶應義塾高校が目指す"野球を通じて引き出す価値"』(東洋館出版社、2020年10月発行)から抜粋して紹介する(全3回の第1回/続きは#2、#3へ)
坊主頭それ自体は問題ではない。が…
21世紀になって20年が経過しましたが、高校野球部のほとんどはいまだに坊主頭のようです。
まず根本的なことを記せば、坊主頭にしていること、それ自体は大きな問題ではありません。より真剣に考えなければならないのは、「高校野球と言えばやはり坊主頭が主流。そこから飛び出るのは嫌だな」と考えてしまう同調圧力、あるいは「昔から坊主頭が当たり前なのだから、それでいいじゃないか」という旧態依然とした習わしに倣っただけの思考停止。そちらのほうが罪深いと思います。さらに個人的な感覚で言えば、主従関係で従属することの象徴と捉えられる部分もあって、その点でも好ましくない印象を持っています。ミスをしたり、チームのルールを破った選手に対して、坊主頭を“罰”として強制する文化も早くなくさなければならないことの一つです。
慶応は、坊主頭も認めている
つまりは「右へならえ」で済ませてしまって何も考えない、疑問を持たないことが問題であり、しっかりと議論をした上で「坊主頭でやっていく」と決めたチームであるならば、それは何も間違いではありません。
慶應義塾高校野球部では坊主頭は強制していませんが、個人的にそうしたいという選手がいれば認めています。部員は全体で約100名ほどですが、そのうち若干名が坊主頭。本人が望み、「そうしたい」という意志を持っているのであれば、当然、尊重します。ただし、まったくの自由というわけではありません。前髪が目にかかってボールが見えにくい状態であったり、投げたあとすぐに帽子が取れてしまうなど、プレーに影響を及ぼすほどの長髪は、私自身の判断で禁止にしています。その線引きさえ正しくできていれば、髪型が野球に影響を与えることはないはずです。
慶応以外にもある“非坊主”校
慶應義塾高校野球部では戦後間もなくの時点で既に坊主頭を強制していなかったという記録が残っています。「野球はそもそもスポーツであり、基本的には楽しむもの。だからこそ坊主頭にしなければならないという強制はおかしい」。こうした考え方が慶應には根強く、それがいまでも引き継がれているのです。