「ここで当たり前のように使われる言葉が、よそでは通じないんです。意味が伝わらない。だから、このクラブからは独特な選手が育っていくのでしょう。たとえば、相手をはがすプレーひとつを取っても、個人として、チームとして、男女ともその感覚を持っています。外に出て、そういった選手をつくろうとチャレンジしましたが、感覚的なことは伝わりづらく、自分が最も苦労したことですね。なぜその手のプレーヤーが多く出てくるのか。ずっと考えていますが、明快な答えはいまだに出ていません」

2020年の宮澤　©Masashi Hara/Getty Images

重要なのはWEリーグのレベルをいかに上げるか

　監督に復帰した東京NBで、松田はどのようなサッカーをつくり上げようとしているのか。

「目指すのは常にボールを持ち、自分たちから攻守においてアクションを起こしていくスタイル。ボールを持っている選手をどんどん追い越していき、後ろではなく前方にパスコースがたくさんできるサッカーです。よりゴールを意識した戦い方をしていきたい。今後、重要なのはWEリーグのレベルをいかに上げていくか。男子と同様に海外に進出する選手が出てくる一方、外国籍選手が入ってくることで全体のレベルアップが見込める。選手の移籍が活発になることのメリットはあるでしょう」

　東京NBの取り組みは日本の女子サッカーの発展につながり、ひいてはなでしこジャパンの強化に直結すると言っても過言ではない。

＜#2「長谷川唯、清水梨紗、藤野あおば」編につづく＞