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なでしこジャパンPRESSBACK NUMBER
なでしこジャパン宮澤ひなた23歳「昨季23戦1得点→W杯で澤穂希と並ぶ5ゴール」恩師が語る“量産の予兆”「それらを感じ取る能力はあった」
text by
海江田哲朗Tetsuro Kaieda
photograph by(L)Katelyn Mulcahy - FIFA,(R)Masashi Hara/Getty Images
posted2023/08/14 11:02
W杯で一躍なでしこジャパンのアタッカーとして認知度を上げた宮澤ひなた。彼女の飛躍のプロセスとは?
「ポテンシャルがあるのは感じていましたが、ここまで結果を出すとはまったく予想していませんでした。点を取るには周囲の協力が必要。仙台では、ひなたがゴール前の仕事を担うほかパスの出し手になったり、チャンスの場面で絡める選手が少なく、持っている力を充分には引き出せなかった。それは彼女のジレンマであり、ストレスだったはずです。一方、代表では周りのレベルが上がり、能力を発揮させてもらえるサポートやアシストを受けられる機会が増えた。それは数字を残せた大きな要因のひとつだと思いますね」
だから、今回の成果にびっくりしているんですよ
ずいぶんと窮屈そうにプレーしているな――。仙台でともに仕事をする前、松田が宮澤のプレーに抱いた印象だった。
「ベレーザではサイドアタッカーで、1対1の場面でガンガン勝負をしてゴールを目指すというプレースタイル。チームの駒のひとりとして、それだけをやっている選手という感じがしましたね。本来、ひなたはボールを持てる技術があり、スピードに長け、ロストしたあと奪い返しにいく切り替えが非常に速い。そして、大変な負けず嫌いです。やれることが多い選手でしたから、一番ボールに触れるところが最適だろうとトップ下やオフェンシブな中央のポジションに配置しました。ただ、得点への意識が乏しかったんです。ゴール前で味方にパスをしたり、シュートを打たずに終わることが数え切れないほどありました。だから、今回の成果にびっくりしているんですよ」
そう言って松田は笑うが、成長の過程にはのちの飛躍につながる下地が覗き、かすかな予兆めいたものを見つけることができる。
「サッカーを知っているというか、理解力が高く、常に考えながらプレーできるのがひなたの長所。トップレベルでは、単に速いだけの選手では通用しません。いつどこでスピードを上げるのか。どんな状況でチャンスが生まれるのか。それらを感じ取る能力はあったと思います。仙台に入った当初、自分から主体的に行動を起こしてゲームをつくるのは不慣れでしたが、ボールを引き出すために何が必要なのかを考え、彼女から発信するプレーがだんだん多くなっていきました。さまざまな角度からプレッシャーを受けるポジションに立つことで、プレーの引き出しが増えていったのは事実です」
東京NBでの経験、環境を変えた判断、仙台での新たなトライ。すべてが宮澤の血肉となっているに違いない。
なぜその手のプレーヤーが多く出てくるのか
東京NBで指導者としてのベースを築き、やがて外の世界に飛び出した松田の述懐がユニークだった。