酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
「ビールの売り子さん」の知らない世界…「女性のお客様を大事に」「タンクを背負って20回は上り下り」“殿堂入り”菜々さんのプロ意識がスゴい
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byTadashi Hosoda
posted2023/08/07 17:04
野球場と言えばビールの売り子さん。ベルーナドームで奮闘する菜々さんに話を聞いた
ある球場では4銘柄それぞれに売り子を雇って4社それぞれが販売を競う。ベルーナドームも以前は4社体制だったが、オペレーションを合理化する目的もあって、今は一塁側と三塁側の2社体制。菜々さんは西武のホーム側である三塁側を担当している。
筆者はベルーナドームのビールの売り子が、銘柄が違っても仲良く話しているのを見て“なぜかな?”と思っていたが、その説明を聞いて合点がいった。その一方で菜々さんはずっと黄色のコスチュームでキリンビールを売ってきた。では一晩で何杯くらいビールを売るのだろうか?
〈平均して土日は絶対300杯は超えて、400はいかないくらいです。キリンビールは1樽7リッターで17杯しか取れないので、土日だと20回くらいはタンクを入れ替えますね。
タンクのビールを売り切るのに長くて15分くらい、ワンコインデー(500円) だと10分かからないくらいです〉
重たいタンクを背負って20回も上り下り
ビールの基地は球場の最上段にある。彼女は重たいタンクを背負って15分おきに1試合、20回もスタジアムを上り下りしていたのだ。
〈最初のうちは、300杯はとてもいきませんでしたね。でもだんだん私からビールを買ってくださる常連さんが増えて、常連さんがどのあたりに座っているかがわかるようになってから売れるようになりました。今では私の売り上げは、ほぼ常連さんで持っています。
三塁側は本当に西武が好きで、いつも同じ場所で試合を観戦されている方が多いですね。新人さんは、新規の人が多いので大変です。これから常連さんを見つけないといけないし〉
常連さんの名前は一切知らないんです
お客さんの数は数えたことがないと言う菜々さんだが、仮に平均5杯飲むとして1晩300杯なら60人という計算になる。