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メジャーリーグPRESSBACK NUMBER
「オレ、野球は得意じゃないから」いま思う新庄剛志“初めて本音を聞いた”メジャー時代…なぜ日本人初ワールドシリーズ出場を果たせたか?
text by
水次祥子Shoko Mizutsugi
photograph byGetty Images
posted2023/08/01 11:01
メジャー時代の新庄剛志。アメリカで3シーズンにわたりプレーした
「出番はオレじゃないだろうと…」
この初戦後、新庄は3試合出番がなかったが、シリーズは第7戦までもつれる激戦となり、第5戦は守備で途中出場、最後の第7戦は3点を追う9回1死一、二塁という一発逆転の大チャンスで代打出場したが、空振り三振に倒れ、チームもワールドシリーズ制覇を逃している。それでも第7戦後の新庄は、満足そうな表情を見せた。
「何とか打ちたかったけど。最後の打席は、球がめちゃくちゃ速く感じました。出番はオレじゃないだろうと思いながら、いきなり言われて。悔いのないようスイングしようと思って打席に入りました。ワールドシリーズのこの経験というのは、野球選手みんなのあこがれ。毎日このためにやっている選手ばかりだからね」
ポツリ漏らした本音
そんな言葉と同時に、本音も漏らしている。
「悔しいという気持ちしかないですよ。この悔しいという気持ちは忘れてはいけないと思う。今年こういう経験をしていなかったら、来年していると思うし」
今、日本ハムの監督として苦しい戦いを続けている新庄を見ると、当時のことが甦ってくる。苦しい状況にあっても常に徹底的に前向き思考を貫く。新庄といえばド派手なパフォーマンスやファッションでお馴染み。「BIGBOSS」のニックネームを発案するなど気ままな自由人のイメージがあるが、実は驚くほど周囲を気づかい、誰よりも空気を読む選手という隠れた魅力の持ち主でもあった。ジャイアンツ時代に打てなくても辛抱強く起用してくれるダスティ・ベイカー監督(現アストロズ監督)や周囲を気づかい「ダスティに使ってもらっているので、応えようという気持ちが強いかな。普通なら外されてるでしょ。チームメートにも悪いし」と言ったこともある。「監督はそんなふうには考えないでしょう」と起用する側の立場に思いを巡らせる発言をよくしていた。
そういえば、米国で今でも語り継がれているあのボンズとケントのベンチでの大喧嘩のことを報道陣から聞かれたときには「トイレに行ってたから、見てない」と答えていた。今振り返ると、あれも新庄流の気づかいの言葉だったと思う。周囲に常に目を配るその人柄が、ボンズのような気難しい選手の心をもつかんだ理由だった。
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