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報徳学園も智弁和歌山も“まさかの敗退”…いま現場で何が起きているのか? 「甲子園だけ目指す高校野球」「個よりチーム優先」が終わる予感
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byKatsuro Okazawa
posted2023/07/22 11:01
7月15日に和歌山大会の初戦で敗退した智弁和歌山を皮切りに、全国各地で強豪校が次々に敗退。波乱の様相を呈している。なぜ、次々に強豪校が敗れているのか?
監督の菅澤悠は情報収集に熱心で、チームに様々な“指導者”を呼んでいる。元アメリカ独立リーガーの肩書を持ち、神奈川県藤沢市で野球塾を営む長坂秀樹氏や4スタンス理論を習得し、選手の個々にあった体の動きを教える滝原一正氏……。こうした専門家を呼ぶことで、「個」の成長を促してきた。
部員50人いれば、50人の育成法、成長の仕方がある。そのため、菅澤監督はたくさんの指導者に来校してもらうことで、選手たち一人ひとりの成長のきっかけ作りに励んできたのである。
「甲子園絶対主義」の終わり?
かつて、高校野球はチーム第一主義だった。チームが一つにならなければ、甲子園にたどり着けないと刷り込まれていた。突出した「個」の存在は、組織の中ではややもすれば、足枷にもなる。さらに監督自身の手によって選手を育てるというのがこれまでのデフォルトだった。それが今や外部に学ぶという形に変化しているのだ。
「個」への比重が高くなれば、連携や戦い方といった「チーム」の力という部分ではマイナス作用が働きかねない。その結果、トーナメントという一発勝負の世界で、足をすくわれるという事態が起こっているのではないか。もっと言えば、チームとして「甲子園は絶対的に目指す場所」という甲子園絶対主義から、今の高校野球が少しずつ距離を置き始めている証左と言えるかもしれない。
チームで甲子園を目指すことより先に、「個」の成長がある。
強豪校敗退のニュースは、一見すれば一大事のように見えるかもしれないが、高校野球の移り変わり、変化の第一歩と考えれば、ポジティブなニュースに思えてならない。
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