大ブレークの阪神・村上頌樹25歳「7回完全でも降板」の夜に坂本誠志郎がかけた厳しい言葉とは…“虎の村神様”を導く女房役の「洞察力」

　あの夜、あえて厳しい言葉を投げかけた。

　阪神の坂本誠志郎はプロ3年目の右腕の気持ちを痛いほど分かっていた。先発である以上、最後まで投げ切りたい。ましてや、安打も四球も許していなかった。マウンドに未練があるだろう……。これが投手の本能である。だからこそ、5歳下の後輩に対して、情を排して言うべきことを言った。

村上降板の「意味」

　4月12日のジャイアンツ戦。

　8回表1死走者なしで、完全試合ペースの快投を続けている村上頌樹に打席がやってきた。スコアは1－0。岡田彰布監督がベンチを飛び出し「代打・原口文仁」を告げた。快挙まで残りアウト6個での途中降板に、東京ドームはしばらくざわめきが収まらなかった。

投手交代を告げる岡田監督　©︎Hideki Sugiyama

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　この継投策は裏目になり、追いつかれた。坂本も9回表の勝ち越し機で代打を送られ、ベンチに退いた。延長戦に入り、味方に声援を送りながら、村上降板の「意味」を考えていた。なんとか白星をつかんだ試合直後、三塁側のロッカールームで帰り支度をする村上に歩み寄った。

「ナイスピッチング！　すごくよかったぞ」

阪神・坂本誠志郎　©︎JIJI PRESS

　序盤から非の打ち所がない内容だった。球威でねじふせ、技巧で惑わせる。剛柔を使い分ける好投をたたえた。

　そして、村上の心のなかに踏み込んだ。

「先発ピッチャーとしてマウンドに上がった以上、絶対、マウンドを譲りたくないという気持ちだけは持っておけよ。『7回をゼロに抑えられた、よかった』で終わっていたら先はない。そこから先も、もっといきたい、もっと抑えたいという気持ちを絶対に持って、これからもマウンドに立ってほしい」

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