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濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
キャッチフレーズは「戦うグラビアアイドル」…異色の女子プロレスラー杏ちゃむの“武器”「私、おじさんキラーみたいで(笑)」《特別グラビア》
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byTakuya Sugiyama
posted2023/06/30 11:00
“戦うグラビアアイドル”のキャッチフレーズで活動している女子プロレスラーの杏ちゃむ
“グラドルに何ができる”偏見との闘い
石川の関節技は、かけられると一瞬でギブアップしてしまうくらい強烈だった。杏ちゃむも腕ひしぎ十字固めやワキ固めをものにし、試合で使っていく。
「グラドルでコスチュームがフリフリなのに渋い関節技を使うっていうのは一つの個性だなと思います。そういうところもおじさんにウケますね(笑)。でも相手からは闘いにくいと言われます」
関節技を仕掛け、相手が逃げようとしたら別の箇所も掴む。逃げようとすればするほど追い込まれる“地獄の関節技”が杏ちゃむのトレードマークになった。石川譲りの関節技は“グラドルに何ができる”という偏見をひっくり返す武器でもある。彼女のもう一つのキャッチフレーズは“関節技の天使”だ。
天使だけれども、ファン時代から好きだったデスマッチにも挑む。蛍光灯デスマッチに電流爆破マッチ。大好きな佐久田俊行と対戦することもできた。蛍光灯で殴られ、安全ピンで刺されたが、好きなことがやれている充実感がたまらなかった。
「やることで充実感があるし、褒めてもらえることでの達成感もありますね。デスマッチをやる選手は少数派だから、普段は闘えない男子のデスマッチファイター、それもトップどころと試合ができるのも嬉しいです。本当はたくさんデスマッチをやりたいんですよ。でもあんまり傷ができるとグラビアに支障が出るので……。どうしても期間をあけながらになっちゃいますね」
「男子とも闘えるしデスマッチもできる。楽しいですね」
デスマッチをひんぱんにできないのが悩みというグラドルは杏ちゃむくらいだろう。東京での活動は事実上のフリーランス。東京の女子団体に移籍を持ちかけられたこともあるが、今の状態が楽しいのだと言う。
「一つの場所にいると、できないことが出てきてしまうので。今はどんな団体にも出られるし、男子とも闘えるしデスマッチもできる。本当に楽しいですね」
シングルのベルト、海外遠征。やりたいことはまだまだある。グラビアの仕事もできる限り続けたい。
長野の団体に所属して東京で活動、カール・ゴッチの流れをくむ関節技を使い、ときどき蛍光灯の破片が頭から出てきたりもする。そんなキャリアは、やはり彼女だけのものだ。
《後編につづく》
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。