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長谷部誠39歳は、なぜ現役生活を“延長”したのか? 今季最終戦で明かした“来季やりたいこと“「もっとできるなという感覚が自分の中にある」
posted2023/06/24 11:00
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph by
Getty Images
「長谷部誠は自分で契約延長するかどうかを決められる唯一の選手」
フランクフルトのマルクス・クレッシェSD(スポーツディレクター)は元日本代表キャプテンの処遇について尋ねられると、いつも自然にそう口にする。言外には「みなさんもわかると思いますが」という雰囲気が醸し出されているし、事実、取材陣もファンもチームメイトもスタッフもみんな納得してこの言葉を受け止める。
疑いようのない手本
選手としての評価についてクレッシェSDは「彼の持つ心構え、規律、そしてサッカー選手としてのクオリティ。チームにとって疑いようのない手本となる選手というだけではなく、いまも我々の試合に好影響をもたらしてくれる存在なのだ」と手放しで称賛する。
あるいは地元のフランクフルターアルゲマイネ紙ではイェルク・ダニエルスという記者が「どのようにチームが勝ち点を手にすることができるかを長谷部はよく知っている。インテリジェンスと明確な判断力は際立っている。彼の持つ経験とリーダーシップは他に類を見ないレベルにある。ピッチ外で、そしてピッチ内でまとめ上げる力を持っている選手だ」とつづっていたことがある。
選手1年という契約内容のはずだった
長谷部は22年2月にクラブとの契約を5年も延長している。とはいえ、当時は1年間選手として+引退となった場合はその後4年間はクラブ内のいずれかのポストに就くという契約内容だった。セカンドキャリアへの第一歩としてドイツサッカー協会B級指導者講習会に参加していたことも話題となっていた。トップチームコーチ、U23、U19やU17といった育成カテゴリーの指導者といった、いろいろな可能性があるというので、1年後には現役引退して、《指導者・長谷部誠》としてセカンドキャリアがスタートすると思った人も多かったのではないだろうか。
そんな長谷部が今年3月に現役選手としての契約を1年延長することを発表した。一体なぜ、長谷部自身は現役延長を決断したのだろう?
スタメンを勝ち取った39歳
今季はブンデスリーガで18試合に出場し、15試合がスタメン出場。「もう一度あの舞台でプレーするのが夢」と語っていた欧州チャンピオンズリーグのピッチにも立ったし、グループリーグでは強豪トットナム戦でイングランド代表FWハリー・ケインを見事に抑えきったことで、国内外のメディアから称賛を集めたのは記憶に新しい。