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長谷部誠39歳は、なぜ現役生活を“延長”したのか? 今季最終戦で明かした“来季やりたいこと“「もっとできるなという感覚が自分の中にある」
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2023/06/24 11:00
カップ戦「DFBポカール」は準優勝に終わったフランクフルトの長谷部誠。最終戦の後に長谷部の口から語られたのは…
あれは2020年2月27日のアウクスブルク戦だった。それまで3バックのセンターで絶対的な存在だった長谷部だが、チーム戦績不振の影響もあり、当時監督だったアディ・ヒュッターが20年1月から4バックへのシステム変更を決断し、この日はスタメンから外れることになっていた。ベンチスタートだったが、前半30分に味方選手の負傷を受けて、途中出場。守備的MFで《アンカー》と呼ばれるポジションで起用されると、優れたゲームコントロールを披露し、5-0の大勝に貢献した。チームとしてボールの動きが滑らかになり、インテリジェンスの高いインターセプトで守備でも存在感を発揮した試合だ。
さぞ手ごたえを感じたことだろうと思って試合後に話しかけたが、どうも笑顔がない。勝ったことはもちろんうれしいし、自分のプレーにポジティブな評価がされた感触だってあるはず。でも、それよりも現状で満足するわけにいかないという負けん気の強さがそこには感じられた。
長谷部「もちろんクラブの、若い選手を買って、育てて、高く売るっていうのは必要だと思う。自分がいつまでもアンタッチャブルな状態はそれがチームにとって良いかって言われると、やっぱり競争はなきゃいけない。そういう正しい競争の中で自分が出れるのであればいいなと思う」
自分の立場もまた変わってきている
めらめらと燃え上がる炎が見えた気がした。
長谷部「自分の立場もまた変わってきていると思うんで、それはそれで楽しみながらやってますけどね」
そういってやっと少し表情を和らげた。
37歳、38歳、39歳。一年ごとに一つずつ歳を重ねて、ここ最近は毎年のように最初は若手選手への若返りが試される一方、勝ち切れないため、長谷部が復帰。そこからチームにまとまりが生まれて上昇気流……と、そうした流れが定番になっているからかもしれないが、出場機会がない時期でも長谷部は落ち着き払っている。それはそれとして全てを受け入れて、毎回の練習にも、試合前のアップでも100%プロフェッショナルな準備をする。だからいざ出場機会が訪れても、その実力をいかんなく発揮することができる。
岡崎慎司が語る「ハセさんのここがスゴイ」
元日本代表FW岡崎慎司もそんな長谷部の振る舞いには驚きを隠せない。