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藤井聡太は張本智和のサーブを鋭く打ち返した…張本が驚いた、藤井聡太の“正解を見つけ出す力”「訪れてみたい国は?」「平成最大の出来事は?」答えは… 

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北野新太

北野新太Arata Kitano

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photograph byTadashi Shirasawa

posted2023/06/23 11:02

藤井聡太は張本智和のサーブを鋭く打ち返した…張本が驚いた、藤井聡太の“正解を見つけ出す力”「訪れてみたい国は?」「平成最大の出来事は?」答えは…<Number Web> photograph by Tadashi Shirasawa

15歳の藤井聡太はスポーツ紙の対談企画で1歳年下の張本智和と卓球で対戦。張本のサーブに当初は苦戦した藤井だったが…

「一言で説明するのは難しいですけど、人間であれば条件を整理し、条件に沿った手を考えていきます。その中で導き出した手でした。現状、ソフトが大変強いことは言うまでもないことですけど、部分的には人間の方が深く読める局面もあると個人的には考えていたので、それが現れたのかなと思います」

 そんなことがあり得るかどうかは分からなかったが、我々の希望にもなり得る言葉だと思った。

「平成最大の出来事とは何か」

 平成が終わる時に「平成最大の出来事とは何か」と尋ねると、再び長考に入った。発生当時8歳で記憶にも残っているだろう東日本大震災と答えると予想したが、2分後の回答は、生まれる前年に起きた米中枢同時多発テロだった。

「9.11のテロは、直接は知らなくて映像を見たことがあるくらいですけど、今考えてもすごく大きな出来事だったように感じます。国家間の戦争という軸が変化し、以前の米国とソ連のイデオロギーの対立から世界が変化したことの象徴だったのかな、と思います」

 各地の積雪量の推移、ローカル線の郷愁、ベーシックインカムの可能性、米中貿易摩擦や北朝鮮の動向、最新CPUの処理速度。藤井の関心は盤上にとどまらなかった。棋聖になった直後、いちばん欲しいドラえもんのひみつ道具は「グルメテーブルかけ」だと破顔一笑した。なぜスピッツの「魔女旅に出る」がフェイバリットなのだろう?

 尋ねたいことは無限にある。私はまだ彼のことを何も知らなかった。

2冠目の王位戦

 劇的な一手によって、眩しすぎた夏を終わらせようとしていた。

 木村一基に挑み、2度目の頂点に迫った王位戦七番勝負第4局。舞台となった福岡市の大濠公園能楽堂の周囲には、寵児を一目見ようとする人々が集っていた。

【次ページ】 強くなる、という目標は変わりません

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