欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
「エンドウはクラブにおける《生命保険》だ」名将ブッフバルトも絶賛、遠藤航が主将として導いた“最下位からの残留決定”「入れ替え戦は罰ゲームではない」
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byJIJI PRESS
posted2023/06/13 17:01
ブンデスリーガ、シュツットガルトの主将としてチームを残留決定に導いた遠藤航。今季終盤でのプレー、言動からも高く評価される理由が見えてくる
遠藤は常々「自分はプレーで示したい」と語っているが、ピッチ上での仲間へのコミュニケーションは細やかで丁寧だ。いいプレーに対して両手をたたいて、味方の目を見て鼓舞する。苦しい局面でも動じずに、味方に「大丈夫だ」という柔らかな空気をもたらす。ゲームプランを正しく理解して、チームが機能するために的確なプレーで支える。
今季、遠藤を待ち受けていたのが過酷な残留争いだった。一戦一戦、高い緊張感と大きなプレッシャーがチームにのしかかり、冷静な判断が難しくなる。若く、プロとしての経験がまだ十分ではない選手が多いシュツットガルトではなおのことだ。
本来シーズンで勝ち点33というのは少なすぎる数字
シュツットガルトは勝てば自力で残留を決めることができた最終節ホッフェンハイム戦を引き分けたために16位で終え、2部3位のハンブルガーSVとのホームアンドアウェーによる入れ替え戦に挑まなければならなくなった。あと少しのところで目標を達成できなかっただけに選手は一様にがっかりしている様子がありありと見て取れた。
そんな時でも遠藤は落ち着きを失わない。入れ替え戦1試合目のホーム戦では遠藤のインタビューがスタジアムマガジンに載っており、そこにはファンへの確かなメッセージがあった。
「最下位に沈んだ時期もありました。直接降格の順位にいたことも少なくないです。もちろんホッフェンハイムにも勝って自動残留というのを望んでいましたが、でも本来シーズンで勝ち点33というのは少なすぎる数字なんです。だから入れ替え戦は罰ゲームとかではなく、シーズンを自分達でハッピーエンドにするチャンスだとみています。僕らがブンデスリーガでプレーするにふさわしいチームだというのを証明したい。クラブとして、チームとして、街全体で一丸となって試合に臨んだら、なしえることができます」
ただピッチ上で散歩をしているわけにはいかない
楽観的過ぎず、悲観的過ぎず。現実的な視点とポジティブな希望がそこにはあふれている。インタビューの中にはキャプテンとしての心構え、責任感、そして覚悟も記されていた。
