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新名人・藤井聡太七冠を羽生善治52歳、谷川浩司61歳ら“永世名人資格の大棋士”はどう見てる?「子供に大きな夢を」「強さの源は…」
text by
NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph byKeiji Ishikawa
posted2023/06/05 17:02
藤井聡太七冠は、新名人となった余韻に浸る間もなくすでに新たな対局に挑んでいる
だいぶ離れてますけど、まあまあ頑張って…
<名言3>
自分の棋力を充実させて結果を出せば、それは必然的に実現する……藤井さん、いくつもタイトル持ってるから、自動的にそうなるんで(笑)。
(羽生善治/Number1060号 2022年10月6日発売)https://number.bunshun.jp/articles/-/856099
◇解説◇
2022年度の王将戦が、将棋ファンのみならず世間的な注目を集めたのは〈藤井聡太-羽生善治〉という将棋界のスーパースター同士のタイトル戦が実現したからだ。2021年度、自身初となる年間負け越しを喫した――そもそもキャリア30年超で負け越しが初というのが恐るべき事実なのだが――羽生だが、そこから復調する。さらにタイトル戦実現が決まっていないタイミングで、羽生は「Number」のインタビューでこんな風に話していた。
「私と中原(誠、十六世名人)先生は約二回り歳が離れていたんですけど、タイトル戦で顔合わせできなかったんですよね。私と藤井さんはどれぐらい違うんだろう? 32歳ですか。だいぶ離れてはいますけど、まあまあ頑張って目指します」
このような柔らかな表現ながら……王将戦挑戦者決定リーグ戦を全勝で勝ち抜けて藤井王将への挑戦権を手に入れたのだから、恐れ入る。
〈将棋の魅力を伝えるフロントランナーとして〉
2人の将棋の天才について、将棋界だけでなく人々は強い興味を惹きつけられる。それゆえ共通点を見出したくなるものだが……羽生はにこやかにこう話していたという。
「いや、私、藤井さんと同じ将棋は基本的には指してないです」
羽生が藤井との王将戦で、変幻自在の戦型を選んだのは記憶に新しい。さらに、一時期は藤井猛九段が考案し、振り飛車に革命をもたらしたとされる「藤井システム」すら使いこなしたし、2017年の「第零期 獅子王戦」では非公式戦ながら、14歳だった藤井聡太との対局で藤井システムをぶつけたという逸話もある。
将棋の面白さを体現しようとする羽生の姿勢には、年齢の離れた若手棋士たちも憧れを隠さない。そんな羽生が藤井新名人誕生時に贈った祝福コメントもまた、将棋という競技の未来に思いをはせたものとなっている。
〈藤井竜王、史上最年少での名人獲得と七冠達成、誠におめでとうございます。前人未到の大記録の達成は、将棋に興味を持つ子供たちに大きな夢と希望を与えます。これからも将棋の魅力を伝えるフロントランナーとして更なる飛躍を遂げ活躍される事を期待しています〉
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