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バウアーまた炎上…「2021年の年俸約38億円→DeNAで今季4億円」“日米経済格差”の中で「87年ヤクルトのホーナー」のようになれるか? 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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posted2023/05/17 11:03

バウアーまた炎上…「2021年の年俸約38億円→DeNAで今季4億円」“日米経済格差”の中で「87年ヤクルトのホーナー」のようになれるか?<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

サイ・ヤング賞経験者のバウアー。今後、MLB時代の投球をNPBで見せられるのか

 投手でも通算149勝のドン・ニューカム(中日)をはじめ、100勝のクライド・ライト(巨人)、310セーブのリッチー・ゴセージ(ダイエー)など、錚々たる実績の選手がNPBでプレーしてきたのだ。

バウアーの2021年年俸は「約38億円」だった

 しかしこれらの大物外国人は、ほぼすべて「成績が落ちてMLB球団からのオファーがなくなり、NPBに来た」選手だ。

 一方で、日本で活躍した外国人選手は「MLBで活躍できずにNPBに来て、日本の野球に適応した」選手だ。外国人最多安打のアレックス・ラミレス(2017安打)も、MLB出身選手で最多勝(100勝)のジョー・スタンカ、ジーン・バッキーもMLBでは実績はほとんどなかった。

 要するにNPBに来る外国人選手は「力が落ちた選手」「MLBで通用しなかった選手」なのだ。それでもNPBで好成績をあげれば評価できるが……。

 その背景には、NPBとMLBの「経済格差」がある。NPB選手の最高年俸はオリックス山本由伸の6.5億円、MLBはメッツのマックス・シャーザーとジャスティン・バーランダーの約52億円。MLBのレギュラークラスは10億円前後が当たり前になっている。この格差があるからMLBの一流選手がNPBに移籍することは考えられないのだ。

 トレバー・バウアーはレッズ時代の2020年、MLB投手の最高の栄誉であるサイ・ヤング賞をパドレスのダルビッシュ有と争って獲得。今、まさに脂の乗り切ったMLB屈指の先発投手であり、年俸も3年契約1億200万ドル。2021年は2800万ドル(約38億円)だった。

 そんなトップクラスの投手がNPBで投げることは普通、あり得ないが、2021年6月にDV疑惑が起こりMLB機構も調査に乗り出す事態となり、球団は契約解除。バウアーはプレーする機会を失った。

 DeNAは以前からバウアーと交流があり、様々な付帯条件を付けて1年300万ドル(約4億円)で契約にこぎつけたのだ。

近い事例はヤクルトに1年だけ来たホーナーか

 これに近い事例は、1987年にヤクルトに来たボブ・ホーナーくらいだろうか。

 1978年ナショナル・リーグの新人王となり、1986年もアトランタ・ブレーブスで27本塁打87打点を記録していたが、オーナーが結託したことでFA権を行使できずにヤクルトに来たのだ。ホーナーは31本塁打73打点、打率.327。すさまじい飛距離の本塁打を連発し「ホーナー旋風」を巻き起こしたが、1年でMLBに復帰した。

 バウアーはホーナー以来の「時価での評価が高い」大物外国人選手だと言えよう。

【次ページ】 まさかの2戦連続での炎上となった

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