酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
バウアーまた炎上…「2021年の年俸約38億円→DeNAで今季4億円」“日米経済格差”の中で「87年ヤクルトのホーナー」のようになれるか?
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byYuki Suenaga
posted2023/05/17 11:03
サイ・ヤング賞経験者のバウアー。今後、MLB時代の投球をNPBで見せられるのか
NPBデビューの5月3日の広島戦は、2021年6月28日のジャイアンツ戦以来の公式戦のマウンドとなったが、7回98球7被安打1被本塁打1四球9三振、自責点1で勝利投手。カットボール、スイーパー、カーブ、シンカー、チェンジアップと多彩な変化球ですべてストライクが奪える上に、糸を引くような155km/h近いフォーシームは威力があり「さすが」と思わせるものだった。
まさかの2戦連続での炎上となった
2回目の登板は9日、新潟での巨人戦。筆者は見に行くことにした。筆者の知るMLBファンも何人か新潟に駆け付けた。
ルーティンであるマウンドの一番後ろからの捕手への投げ込みをしたバウアーは、巨人の一番吉川尚輝を一ゴロに打ち取り、順調な滑り出しだった。しかし2回先頭の岡本和真に本塁打を打たれると、ここから崩れ6回11被安打3被本塁打8奪三振、自責点6で降板した。
5月の新潟は予想以上に寒かった。また、年に1回程度しかNPBの公式戦がない新潟のマウンドは柔らかいうえに低い。この試合のために土を入れたようだが、バウアーの投球が総じて高かったのは、このためかもしれない。それに巨人が2盗塁するなど足でかく乱したのも想定外だったかもしれない。
さらにバウアーは広島戦では韮澤雄也、巨人戦では門脇誠と、普通はノーマークの下位の打者に痛打された。配球を読まれていたのかもしれないし、同じ球種を続けて投げたのかもしれない。捕手・伊藤光のサインに首を振るシーンも何度かあった。ただ6回で103球、四球は出さなかった。打ち込まれても冷静さは失わず淡々と投げ切る、バウアーのマウンドさばきには風格を感じた。
しかし5月16日の広島戦では、初回一死後、3者連続二塁打ののち西川に右越本塁打で4失点、2回も3失点して降板した。2回69球8被安打、自責点7、衝撃的な大炎上だ。何らかの修正がなければ今後、マウンドに上がることも厳しくなるだろう。バウアーはNPBで「投げられること」を証明して、MLBに復帰するプランを描いていたはずだ。このままでは、そのプランが崩れかねない。
とはいえNPBとMLBの経済格差が大幅に縮まらない限り、バウアーのような選手がNPBでプレーする機会は今後もないはずだ。貴重な登板の機会をこれからも注視したい。
1週間の成績を振り返ってみると
【2023年5月8~14日 週間成績】
〈パ・リーグ〉
ロッテ5試4勝1敗0分 率.800
オリックス6試3勝2敗1分 率.600
ソフトバンク6試3勝2敗1分 率.600
楽 天6試2勝3敗1分 率.400
日本ハム5試2勝3敗0分 率.400
西 武6試1勝4敗1分 率.200
ロッテが救援陣の活躍で2位をキープ。オリックスとソフトバンクは14日には延長12回引き分けの接戦を演じた。
〈打撃成績5傑〉※打撃の総合指標であるRC=Run Create順
浅村栄斗(楽)24打8安2本6点 率.333 RC5.86
柳田悠岐(SB)23打7安2本5点 率.304 RC5.58
マキノン(西)21打6安2本4点 率.286 RC5.11
中村奨吾(ロ)17打7安1本5点 率.412 RC5.08
江越大賀(日)13打5安2本4点1盗 率.385 RC4.62
楽天の浅村がリーグ最多タイの2本塁打、最多の6打点の活躍。2本塁打はソフトバンク柳田、西武マキノン、日ハム江越、マルティネス、オリックスのゴンザレスも記録。ソフトバンク周東佑京が3盗塁。
〈投手成績5傑〉※リーグ防御率に基づくPR=Pitching Run順
宮城大弥(オ)1登1勝9回 責0率0.00PR3.05
大関友久(SB)1登1勝9回 責0.00率0PR3.05
加藤貴之(日)1登1勝9回 責0率0.00PR3.05
瀧中瞭太(楽)1登1勝8.1回 責0率0.00PR2.83
伊藤大海(日)1登7回 責0率0.00PR2.38
この週は完封勝利が3人。オリックス宮城は5月9日の楽天戦で109球完封。ソフトバンク大関は9日の日ハム戦で125球完封、日ハム加藤は13日のロッテ戦で102球完封。救援ではロッテ益田直也が3セーブ、ロッテのペルドモが2ホールド。