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高橋大輔は“2度目の現役生活”で「自分で自分をほめてあげられるようになった」 本人が明かした1度目の「嫌な気持ちでの引退」からの変化 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byAsami Enomoto

posted2023/05/05 17:01

高橋大輔は“2度目の現役生活”で「自分で自分をほめてあげられるようになった」 本人が明かした1度目の「嫌な気持ちでの引退」からの変化<Number Web> photograph by Asami Enomoto

2人そろって引退会見をおこなった村元哉中・高橋大輔の“かなだい”ペア。高橋から語られた引退の理由は長年苦しんだ「右膝のケガ」だった

「もう大丈夫かな、十分やりきったかなって、ペアはもうさすがにできないなって思っていて、自分の中でほんとうにすっきり、やりきれたなと思います」

「アイスダンスをやっていなかったら、現役に復帰しなければ、この感情になることもなかった。競技復帰してからの自分がほんとうに好きで、今までの自分っていうのは自信が持てず、自分をほめることもできなかった。だけど、競技復帰してからはちょっとでもできることがあれば『ああ、よくできたな』ってほめてあげられるようになったし、すごく前向きになっていく自分が出てきました」

アイスダンス種目への多大な貢献

 2018-2019シーズンから現役に復帰し、2019年9月、アイスダンスに挑戦することを表明。オリンピックや世界選手権で表彰台に上がるレベルで活躍したシングルのスケーターが転向した例はなく、それ自体が海外でも広く反響を呼んだ。33歳という年齢もあって、異例の挑戦として注目を集めた。

 今、競技生活における挑戦は終わった。大会ごとにめざましい進化を見せ、2人ならではのプログラムを次々に創り体現することで強い存在感を示した。アイスダンスへの関心を飛躍的に高めた。

 アイスダンスという種目への功績は大きい。だが、何よりも高橋にとって、チャレンジした価値は大きなものだったという。

高橋に自己肯定感を与えた「アイスダンス」

「この経験をしなかったら、たぶんもっと(自分を)責めたままで終わったなって感じるので、自分自身として自分をほめてあげて、どれだけ豊かに過ごしていくか、ちゃんとできるようになったと思います」

 シングル時代も、アイスダンサーとしても、右膝と向き合う日々は、簡単に言葉でまとめきれない労苦があった。それでも向き合いつつ、心の奥底で消えることのないスケートへの愛着とともに取り組んできた過程は尊い。

 何かに挑戦することに「遅い」ということはない。なによりもそのことを証明してみせた。その末に到達できた境地であった。

<「“かなだい”2人の決断」編とあわせてお読みください>

#1から読む
高橋と村元は自然と目を合わせ…“かなだい”引退会見で見えた“2人の信頼関係”「これ以上の最高のパートナーはいない」「僕から哉中ちゃんに…」

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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