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女子体操界で続く“深刻な怪我”のナゼ? 全日本選手権で14歳と20歳が棄権に「偶然という言葉で済ますのは…」背景に技の難化、選考のプレッシャー
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byJIJI PRESS
posted2023/04/28 06:00
全日本選手権の平均台の着地に失敗した山口幸空。左膝前十字靱帯損傷の怪我を負った
10代選手も高難度の技を…現場は怪我のリスクをどう減らす?
また、女子の場合、どうしても10代半ばあたりから全国大会の上位で活躍し、やがて国際舞台に臨む選手が少なくない。以前から厳しく体重をコントロールしているケースが指摘され課題ともなってきたが、それもあいまって体が出来上がっていない状態でより難しい技へ――という流れも怪我のリスクを高めているきらいがある。
全日本選手権で上位の選手に怪我が続いたのは偶然かもしれない。ただ、競技をめぐる環境その他を考えれば、偶然という言葉で済ますわけにもいかない。
先に記したように、医療レベルでも怪我のリスクについては把握されている。問題が見えていないわけではない。それでも競技レベルの向上など取り巻く状況がある以上、より一層、予防やケアへの意識を現場から高めていくほかない。少なくとも、選手に無理を強いる、無理に追い込む状況はあってはならない。また、マットや器具などにより怪我のリスクを減らす工夫を凝らせないかもテーマとして考えられる。
山田も山口も、パリ五輪を目指し復活を期すとしており、診断の結果、それが可能な状態でもあるという。それは幸いとして、こうした怪我が相次ぐことがないよう、多面的に考えていく必要があるだろう。
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