就職活動をしていた大学4年の春、サントリーから誘われた。引退後に一流企業で働けることは小野にとって大きな魅力で、入社を決めた。

「今はバレーボールが仕事なので」とコートでは常に全力で、結果も出したが、社業への思いがしぼむことはなかった。毎年夏場は週に1、2回出社し、上司の営業に同行したりするうちに仕事への興味が増した。

「若くてたくさん働けるうちに社業に入って、バリバリ仕事していきたい。まずはしっかり仕事を覚えて、社業でもトップになれるように。今いる後輩たちがいずれ社業に入ってくる時に、そこで手助けができたらなというのもあります」

大宅は社員からプロ選手に転向

　一方、「ニコイチ」の相棒・大宅は、小野と同期でサントリーに入社したが、2年目にプロ選手に転向した。

　現状のVリーグは企業チームとプロチーム、社員選手とプロ選手が混在している。サントリーは企業チームだが、社員として入った後、プロに転向する選手も多い。昨季と今季のファイナルの先発メンバーのうち、社員選手は小野だけだった。

　違う立場にはなったが、大宅と小野は練習中や移動中、常に一緒に行動していた。今季限りで引退することを大宅が小野から告げられたのは、昨季終了直後だった。

「ちょっとふざけて、『もう俺と一緒にやりたくないんだー』とかは言いましたけど（笑）、引き止めることはしていないです。もともと社業には早めに行きたいと言ってたので。5年もやってくれたのは逆にありがたかったと思っています。自分の人生なので。僕も、プロになることを自分で決断してやっているし、それぞれやりたいことがあると思うから。僕はバレーしかないので、体がぶっ壊れるまでやりたいですけど（笑）」

コンビだけでなく気も合う小野（左）と大宅は常に行動を共にしてきた　©︎Noriko Yonemushi

　サバサバと語るが、小野とのコンビで目指していたところにたどり着けなかった悔しさもある。

　大宅が小野とのコンビを磨きあげる上で、目標としてきたのが、今年3月10日に病のためこの世を去った東レアローズのセッター藤井直伸さんと、ミドルブロッカー李博のコンビだった。

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