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フォーク覚えて今季は無双!? カープ松本竜也が「直球一本槍」から大変身で空振り奪取率3倍!
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byJIJI PRESS
posted2023/04/24 17:00
この春のキャンプで調整登板する松本。この時点ではフォークが使えるか確証を得ていなかった
「中継ぎで、セットアッパーをするとなると、空振りを取れる球種が必要になる。そこで『フォークのピッチバリューを上げましょう』という話になった。それによって、よりストレートが生きる」
飯田はフォークの必要性を説いた。まだスコアラーという肩書だった昨季から、ホークアイやラプソードによって集められたデータの分析を進めていたのだ。
秋季キャンプのブルペンではラプソードで計測されたデータをもとに飯田が声をかけ、2人の投手コーチは経験から技術指導を行う。あの日から松本と飯田、そして2人の投手コーチが同じ方向を向いて進んで行った。
シーズン中から助言を受けてきた栗林や矢崎拓也にも新たな助言を求め、春季キャンプ中には黒田博樹球団アドバイザーからも直接指導を受けた。
リリース時の感覚から手首の角度、球を挟んだ人さし指と中指を支える残り3本の指の位置などの微調整を繰り返した。気づけば、開幕目前となっていた。
「オープン戦でいい反応が見られた球もあったんですけど、なんでその球を投げられたのかまったく分からなかったんです……」
公式戦で初めて掴んだ手応え
確かなものがないまま迎えたシーズン開幕。今年初めて対戦した三冠打者に投じたフォークは、ストライクゾーンからボールとなってスイングを誘った。イメージしていた球だった。
「やっとここまで来た」
その1球が、自信を与えてくれた。
今季2度目の登板となった7日の巨人戦では、先頭の吉川尚輝を5球すべて直球勝負でセカンドゴロに打ち取ると、続く門脇誠を追い込んでからフォークでショートフライに打ち取った。
9日の巨人戦では、7回2死から7日に真っすぐで中飛に打ち取った松田宣浩をフォーク2球で追い込むと、カウント1−2からの5球目はまたもフォークで空を切らせた。
「握りを変えながら投げて、いい反応、いい球になってきている。まだ、決め球としては物足りないところがある。でも、イチかバチかで投げてはいない。やっと追い求めるところまでは来たかな」
開幕前の不安そうな表情とは別人のように、愛嬌のある丸顔をくしゃくしゃにして笑った。
フォークはまだ発展途上にある。開幕からの自責点ゼロを7試合と継続するが、奪三振率4.26は各球団の勝ちパターン投手の中では低い。物足りない数字は自ずと上がっていくだろう。フォークで空振りを奪った割合は、昨季の10.2%から31.3%(5試合登板時点)と上昇。カープの守護神・栗林級の数値をたたき出している。伸びしろの分だけ、期待と可能性は広がる。
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