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「PGAツアー対LIVゴルフ」マスターズが“異様な雰囲気”にならなかったのはナゼ? 選手の本音「メディアで必要のないことが…」
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byGetty Images
posted2023/04/14 17:01
今年も多くのギャラリーを魅了して閉幕したマスターズ。ツアーの分裂抗争に話題が集中するが、世界最高峰の選手が集まる価値を改めて提示した大会だった
画面越しにのうのうと、日本で時差ボケ状態になっていた筆者とは違い、現地オーガスタに赴いた人の中からは、「LIV組への声援は比較的、少なかった」という声もあった。実は大会が開幕した日、PGAツアーとの連携が強い欧州ツアーが、昨年LIVに移籍した選手に“勝訴”したことを発表。ツアーの許可なく新天地を求めたメンバーに科した罰金について、英国のスポーツ仲裁機関が正当性を認めたのだった。
好調だったケプカ、ミケルソンの追い上げ
そんなこんなで始まったマスターズは、キャリアグランドスラムがかかったマキロイが予選落ちを喫し、ケプカが首位で決勝ラウンドの前半をリードした。
3日間54ホールの競技フォーマットを誇らしげに喧伝するLIVで過ごすケプカは、確かに55ホール目以降の最終ラウンドにラームに逆転された(実際には悪天候で2日目から順延が重なり、最終日は第3ラウンドの残りと合わせて30ホールを回った)。
ただし、PGAツアーよりも試合数が少なく肉体的な負担が軽減される新リーグのスケジュールがなければ、このポジションでプレーすることもなかったかもしれない。2019年までにメジャーで4勝をマークした頃から、右ひざのけがに苦しみ、21年には手術に踏み切った。LIVの幾分、余裕のある日程は彼にとってコンディションを整えるのに都合もいい。
移籍後、ケプカが予選落ちのない高額賞金シリーズで、悠々自適に生活しているかといえばそうでもない。LIVの試合現場には毎度スイング、チッピング、パッティングの各コーチ陣が勢ぞろいして、マスターズに“かけて”きた。
殊更LIV勢の肩を持つ気はないが、タイガー・ウッズが棄権した最終日、ケプカが後退した最終ラウンドで、リーダーボードを駆け上がったのは新リーグのレジェンドになるであろうフィル・ミケルソンだった。もちろん、レフティの心境は優勝争いの熾烈なプレッシャーを受けたケプカのものとは違うはず。それでも、4位タイまでの6人中、パトリック・リードを含めた3人がLIV勢だったのも事実だったりする。