「今回は短いイニングを投げる前提でのピッチングだったので、例えばあのクラスに6回100球を投げることを考えたとき何点取られてしまうのか、自分が自信をもって通用すると思った瞬間はない、といった感じですね。まだ実力が足りないと実感したし、自分が抱いている不安要素と一致したので、そこを埋めていく作業をこれからしていかなければいけない。ただそこを埋められれば、ある程度のパフォーマンスは出せるかなって思っています」

バウアーは「これ以上ない教科書」

　埋めるべきポイントを今永は口にしなかったが、心強い援軍になりそうなのが今季DeNAに加入したサイ・ヤング賞右腕のトレバー・バウアーだろう。両者は2019年にアメリカのトレーニング施設である『ドライブライン・ベースボール』で顔を合わせており、現在もDOCK（ファーム施設）でコミュニケーションをとっている。

「常に球速やボールが曲がる軌道や理論を研究していて、逆にそれを質問してもすぐに答えてくれるので非常に参考になっています。バウアー選手が同じチームで一緒にやっているのは、これ以上ない教科書ですし、この機会を逃すわけにはいかないという気持ちですね」

　名投手でありベースボール・サイエンティストのバウアーとの接触で、今永がどのように変化していくのか注目したい。

ダルビッシュから授かった「フィットしそうな言葉」

　さてWBCという未曽有の経験をして挑む今シーズン、DeNAのエースとしてどんな姿を見せることができればいいと考えているのだろうか。

「まずは自分へ課すハードルを高くし過ぎない、ということですね」

　ごく自然な雰囲気を漂わせ、今永はつづける。

「これもダルビッシュさんからの言葉なんですけど『まわりが自分にかけてくれる言葉も大事だけど、自分が自分にかけてあげる言葉も大事にしなきゃいけない』と。例えば不甲斐ないピッチングがつづけば、まわりからは批判や前向きではない言葉が多くなっていくでしょう。『けど、それは自分じゃない誰かが言っていることであって、同じことを自分がしてしまえば、自分を許してあげる存在がいなくなってしまう。だから自分がかけてあげる言葉を大事にしなきゃいけないし、自分もそうすることでよくなった』と、アドバイスをいただいたんです。うん、何か僕にフィットしそうな言葉だなって」

　そう言うと今永は明るい表情を見せた。

©Naoya Sanuki

　自分のことを諭し、許すことができるのは自分だけ。まわりに流されず、自分にしっかり矢印が向いていれば、迷うことなくパフォーマンスを発揮することができる。

　果たしてどんなピッチングを見せてくれるのか。もう間もなく今永のペナントレースがスタートする――。

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