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「大谷(翔平)選手は雑なところが一切ない」今永昇太29歳がWBCで考えさせられた“これからどう生きるのか”「ダルビッシュさんから言われたのは…」
posted2023/04/10 11:03
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph by
Naoya Sanuki
歓喜に沸いたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の決勝戦から約2週間後の4月5日、横浜DeNAベイスターズの今永昇太はイースタン・リーグの巨人戦(横須賀スタジアム)のマウンドに立っていた。
WBCのときにフォームをちょっといじったりしていた
WBCから帰国後、初の実戦登板。5イニングを投げ67球、被安打3、自責点0。序盤は強いストレートで押し込むと、3回に味方エラーやアンラッキーなヒットで失点するが、その後は打たせて取るピッチングに切り替えた。珍しく89キロの超スローカーブを放るなど、試行錯誤しながらのマウンドだった。
「とりあえず安心したというか、意外と投げられたなといった感じですね」
投げ終えた今永は、安堵を漂わせ納得した表情でそう言った。じつは投げる前に一抹の不安があったという。今永は3月23日にマイアミから帰国すると、26日に西武とのオープン戦を控えた主力が集うベルーナドームに合流している。
「そこで久しぶりにNPB球を使ってキャッチボールをしたんですけど、いやちょっとやばいな、大丈夫かなって思ったんですよ。WBCのときにフォームをちょっといじったりしていたので」
これはすんなりとはいかないかもしれないなって…
今年に入ってから今永はWBC球のみを使いピッチングをしてきた。感覚を研ぎ澄まし、時間をかけ適応したことで、WBCでは好投に至ったが、いざ自分のチームに戻りいつも使っていたはずのボールを投げてみると違和感が出てしまった。
「なにも考えず(NPB球を)投げたとき、球がいかなかったり、体に負担がかかっている感覚があったので、これはすんなりとはいかないかもしれないなって……」
ピッチャーの肉体と感性は繊細だ。ましてや今永は過去、左前腕部の故障や左肩の手術などを経ているので、微細な自分の体の声を聞きながら慎重にならざるを得ない。WBCでプレーしたピッチャーが続々と一軍で登板してはいるが、今永がスロー調整になってしまうのは仕方のないことだった。
「でも大丈夫ですよ。ベルーナから10日ぐらい経ちましたが、投げれば投げるほど合っていくな、という感覚は得たので」
万全となった今永が一軍のマウンドに戻ってくることを誰もが待ちわびている。
最後はみんなが優勝に導いてくれた
では、侍ジャパンのメンバーとして過ごした日々を改めて振り返ってもらおう。今永はWBCに挑むにあたり「野球を終える時に真っ先に思い出すような、そんな投球を」と語っていたが、実際にそう思える時間になったのだろうか。