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「中心はイシカワだ」石川祐希27歳がイタリアで放つ存在感「僕の名前が呼ばれた時にミラノが一番盛り上がった」<現地インタビュー>
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byTakahisa Hirano
posted2023/04/05 17:00
世界最高峰のイタリアのバレーボールリーグ、セリエAで8シーズン目を迎えた石川祐樹。ミラノの中心選手として来季もプレーすることが決まっている
35対33で第1セットを制すると、石川は右手を握りしめ、突き上げ、身体全体で喜びを表現した。勝利を近づける1本を、俺が決めて見せたぞ、とばかりに。
「自分しか決まらない状況が続いて、苦しくもありました。相手も僕に対して警戒してくる中で、耐えないといけない。自分のプレーを見せることが評価になるし、チームを勝たせることにもつながる。今までと比べても、チームを引っ張っている自信もありました」
石川「これは無理だ、と判断しました」
おそらく初めてミラノを見た人も思うはずだ。中心はイシカワだ、と。
そしてその直感は、決して間違いでないという確信を抱かせる。皮肉にも、その後生じたアクシデントが、これ以上ない形で、石川の存在感を際立たせた。
1、2セットを連取したミラノに対し、第3セットはトレントがリードする展開で迎えた終盤、17対22の場面だった。
左内腿に違和感を覚え、石川が一度、コートを出る。第4セットにはテーピングをして再びコートへ戻るも、1本スパイクを決めた後、左だけでなく右脚も気にする素振りを見せながら、コートを去った。
「ここ数試合、ふくらはぎが攣ることはあったんです。でも内腿は初めて。攣ったのか、最悪肉離れか。その時は状態もわからなかったのと、左脚をかばっていた分、今度は右太腿が攣った。これは無理だ、と判断しました」
ボールをつなげ、得点を決める、獅子奮迅の働き。当たり前のように攻守両面でチームの柱、軸となる活躍を見せてきたが、走り、跳び、止まる、瞬発的にだけでなく、動き続けることで身体にかかる負担は底知れず、見えないダメージは蓄積していた。