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大谷翔平「奇襲バント+絶叫71球」に見る“超負けず嫌い”「たまーにするからオモロイなと」「最後の夏、甲子園に行けなかった悔しさはずっと」
posted2023/03/17 11:17
text by
NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph by
Gene Wang/Getty Images
<名言1>
ファンの人が見ていて何が楽しいのかを考えると、バントヒットもたまにするからおもしろいんじゃないかと……ホームランを打つ人がたまーにバントをして一塁へ走るから、その姿が『オモロイな』となるわけで。
(大谷翔平/Number1048号 2022年3月31日発売)
◇解説◇
3月16日のWBC準々決勝、大谷が東京ドームと日本全国の野球ファンを一番驚かせたのは……気合のピッチングや豪快なフルスイングではなく、「シフト破りのセーフティバント」だっただろう。
驚きの一手だった。0-0で迎えた3回裏1死一塁の場面、バッターボックスには大谷が立った。この日の相手イタリアはマイク・ピアザ監督の下で守備陣形を細かく替える「シフト」を敷いており、この打席の大谷に対しても痛烈な引っ張りを警戒してセカンドだけでなくショート、サードが極端に右方向へ寄っていた。
大谷はそれを逆手に取った。
相手の2番手左腕ラソーザが初球ストレートを投じた瞬間、選んだ選択肢はスイングではなくバント。守備者のいない三塁方向に転がると慌てて打球処理に入ったラソーザの一塁送球がずれ、大谷はセーフ。相手がもたついている間に一塁走者の近藤健介もしっかりと三塁まで進塁して1死一、三塁のチャンスを作る。そして4番に入った吉田正尚の――通常の守備陣形ならセンター前ヒットなのだが――ショートゴロによって待望の先制点を奪い取った。
侍ジャパンは掴んだ流れを離さず、5番・村上宗隆の四球でつなぐと、6番・岡本和真が巧みにボールをバットに乗せ、3ラン本塁打で追加点。4点を奪い取ったこのビッグイニングが、9-3の快勝につながったと言えよう。
エンゼルスでもたまに見せるセーフティバント
こんな勝負所で、まさかセーフティバントとは……と驚いた人も多いかもしれないが、実はエンゼルスで大谷はしばしば“奇襲バント”を仕掛けている。
例えば2021年4月26日の試合では「リアル二刀流」として起用され、初回にいきなり4失点を浴びたものの、その後マウンドで復調し、投手として3シーズンぶりの白星を得た。打者としてタイムリーツーベースヒットを放つとともに、3点リードの6回の第4打席にはシフトをあざ笑うセーフティーバントで悠々と一塁セーフになると、後続が続いて勝利を決定づける8点目のホームを踏んだ。