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「中学生の山本由伸は“どこにでもいる普通の選手”だった」コーチが叱れなかった“クシャっと笑顔”「怒られないギリギリの見極めが上手い」

posted2023/03/13 11:02

 
「中学生の山本由伸は“どこにでもいる普通の選手”だった」コーチが叱れなかった“クシャっと笑顔”「怒られないギリギリの見極めが上手い」<Number Web> photograph by CTK Photo/AFLO

12日、オーストラリアから8個の三振を奪う圧巻の投球を見せた山本由伸(24歳)

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花田雪

花田雪Kiyomu Hanada

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CTK Photo/AFLO

 WBC1次ラウンド第4戦オーストラリア戦に先発した山本由伸(24歳)は、4回を投げて無失点、8奪三振という圧巻の投球で実力を世界に見せつけた。
 昨季はオリックス・バファローズの日本一に貢献し、個人でも2年連続で「投手四冠」を達成。まさに球界のエースに成長した24歳はどんな少年時代を過ごしてきたのか。ルーツに迫るべく、地元・岡山県に向かった。
 この記事は、書籍『オリックス・バファローズはいかに強くなったのか〜選手たちの知られざる少年時代〜』(著・花田雪/日本文芸社)を一部抜粋したものです。【全2回の1回目/続きは#2へ】

 JR岡山駅から車を走らせること10分ほど。岡山三大河川に数えられる旭川の分流・百聞川の河川敷に、山本少年が中学校時代に所属した東岡山ボーイズの専用グラウンドがある。

 駐車場に車を停め、グラウンドまで歩いていくと、一歩踏み出すごとに無数のバッタが飛び跳ねる。虫が苦手な人であれば、ちょっとたじろいてしまうほどの量だ。

 グラウンドの奥には岡山丘陵の山々と、青々とした空が広がる。

 岡山駅の中心地からそこまで距離はないものの、豊かな自然を感じるには十分すぎる景色だ。

「どこにでもいるような普通の選手」

 山本少年が所属していた当時のことを話してくれたのは、東岡山ボーイズの代表・藤岡末良さん、監督の中田規彦さん、副代表の豊田裕弘さん、コーチの片山勇人さんの4人。全員が、中学校1年生から卒団する3年生時まで、山本少年を指導した面々だ。

 東岡山ボーイズはもともと、代表の藤岡さんが中心となって立ち上げたチーム。岡山県内では初のボーイズとして1988年に創設されている。

 そんな歴史あるチームに山本少年が入団したのは、中学校入学とほぼ同時期。当時のことを、指導者たちはこう語る。

「背も低くて、線も細い子でした。器用なタイプではあったけど、決して『飛び抜けて上手い』というわけでもない。ウチには毎年1年生が入団してきますけど、どこにでもいるような普通の選手でした」

 東岡山ボーイズに入団する前、小学生時代は地元の軟式少年野球チーム『伊部パワフルズ』に所属していた山本少年。

 2学年上には現在もチームメイトである頓宮裕真がおり、彼と実家が隣同士だったのは有名な話だ。6年生時には全国大会にも出場し、神宮球場のマウンドも経験している。

「ただ、入団したときはピッチャー用ではなく内野手用のグラブを買ってきていました。本人もいきなりピッチャーをやろうとは思っていなかったんじゃないですかね。ノックでもセカンドに入っていましたね。ユニフォームがブカブカで、法被みたいになっていましたよ(笑)」

【次ページ】 「本気で走っている姿を見たことがない」

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