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「すぐに満男さんに言わなきゃ!」活動12年“東北人魂”にいた石巻の小学生がJリーガーに…新築の家が全壊した少年を支えたサッカー教室 

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佐野美樹

佐野美樹Miki Sano

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photograph byMiki Sano

posted2023/03/11 11:00

「すぐに満男さんに言わなきゃ!」活動12年“東北人魂”にいた石巻の小学生がJリーガーに…新築の家が全壊した少年を支えたサッカー教室<Number Web> photograph by Miki Sano

今季からベガルタ仙台でチームメイトになったMF遠藤康(34歳)とFW菅原龍之助(22歳)。遠藤らが宮城県石巻市で開催したサッカー教室に、小学生の菅原が参加していた

 5月になると、少しずつ好きなサッカーが菅原の日常に戻ってきた。スパイクやボールなどは全て流されて無くなってしまったが、支援物資として届いたものを使ってトレーニングができるようになった。そして2カ月ぶりに、菅原の所属する少年団のメンバーが集まりフットサル大会が開催されると、サッカーへの思いが溢れ出したという。

「とにかく『あー、やっぱりサッカーは楽しいなぁ!』って思ったのは、すごく鮮明に覚えています。これからもやりたいな、やっぱりサッカー好きだな、サッカーできるっていいなって、その時何度も思いました。久しぶりにみんなでプレーしたことが、サッカーへの思いをより強くしたのかなって感じています」

 その頃から、サッカーをはじめ色々なスポーツのイベントが、支援活動の一環として各被災地で催されるようになっていた。そのうちの一つとして菅原が参加した中に、遠藤との最初の出会いとなった東北人魂のイベントがあった。

たった1人で被災地に向かった小笠原

 遠藤は、鹿島の先輩である小笠原がたった1人で被災地に向かったことを静岡滞在中にニュースで知った。小笠原の母校がある岩手県・大船渡や、陸前高田に物資を運んでいた。その後、チームの再始動で久しぶりに小笠原に会うと、その顔つきに遠藤は驚かされたという。

「もう、すごい形相というか、ものすごく疲れ切った顔をしていて。きっと満男さんも現地に行くことで迷惑になるんじゃないかとか、自分の中で戦ったと思うんです。たぶん。でも自分の目で見ないと、あの人は気が済まない人だから。行動に移さないと気が済まない人だったから。だからあそこで行動に移せるのが満男さんだし、それはあの人にしかできないことなので、僕はただただ『すごいな』と思うばかりでした」

 遠藤はそんな先輩の姿を目の当たりにし、自分にも何かできるんじゃないかと考えていた。すると、小笠原がサッカー選手だからこそできる支援団体『東北人魂』を立ち上げて、東北出身の選手で活動しようとしている、という話を聞いた。

「満男さん本人から直接言われたわけではなくて、スタッフから聞いたんです。たぶん満男さんは、自分が直接言ったら強制参加になるんじゃないかと気遣ってくれたんだと思います。それを聞いた時は『もちろんやるよ!』って即答でしたね。僕も少しでも何かの役に立ちたい。その思いが強かったです」

 そうと決まれば、遠藤の行動は早かった。

 早速宮城県の友人たちと連絡を取り、6月には東北人魂の名を掲げた初めてのイベントを主催した。その場所が石巻だった。

【次ページ】 石巻の小学生150人の中にいた菅原

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