それにしても、当日に急遽入った予約で、超一流選手たちに肉150人前と米30合を提供するというのも至難の業。そこには、この名店ならではの理由もあった。

　実は「明月館」はラグビー日本代表に選ばれたこともある金正奎の実家に当たる。常翔啓光学園高時代に花園で優勝し、早大ラグビー部でも活躍したフランカー。人格者としても知られ、今季はリーグワン2部の首位を快走する浦安D-Rocksの大黒柱としてチームを牽引し、フッカーにも挑戦している。ラグビーW杯2019の日本代表FB山中亮平（神戸）やFL德永祥尭（BL東京）をはじめ、関西を拠点とするチームの選手もたびたび来店しており、ラグビーファンにとっても“聖地”のような存在だ。

　過去には星野仙一監督時代の楽天がチーム全員の決起集会に使ったこともあり、三月場所（大阪）では力士が訪れることもあるという同店。肉は全て当日に手切りしたものを使っており、アスリートに最も人気が高いという和牛のハラミに、大谷、ダルビッシュら侍戦士たちも大いに舌鼓を打ったようだ。

　ちなみに、選手たちが投稿した写真の一番手前の席に一脚だけ写っている椅子は、日系選手として初めて代表入りしたラーズ・ヌートバー（カージナルス）の席だ。

　座敷に座ることに慣れていないヌートバーのために店が用意したものだが、日本人の母を持つ「たっちゃん」は慣れた手つきで肉を焼き、器用に箸を使って大いに焼肉を楽しんだ。大谷のインスタグラムの画像には「kyodai」とコメントしており、7日の試合後には「一番お気に入りの日本語はキョウダイ。食事会の時にショウヘイ（大谷）か誰かから教わったんだよ」と明かしている。

最年長ダルビッシュの“世界一宣言”

　30人＋1人の侍が結束した焼肉決起集会。最後に挨拶に立って、チームをまとめたのはダルビッシュのこんな言葉だった。

「みんなで力を合わせて世界一を目指してがんばりましょう！」

　元気よく気勢をあげた選手たちは、翌6日の阪神との強化試合で8-1と快勝。7日のオリックスとの強化試合ではこれまで不調に苦しんでいた山川、村上宗隆（ヤクルト）に1発も飛び出し9-1と最高の形で準備期間を締め括った。

　3大会ぶりの世界制覇へ――。大阪の夜、さらに固く結ばれた絆を力に変えて、いま出陣の時を迎える。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。