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「20シーズンの経験はメリットでしかない」F1現役最年長アロンソが開幕戦3位表彰台、41歳が見せた老獪な駆け引きとは
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2023/03/09 17:02
自身は3位ながら、満面の笑みで1−2フィニッシュを飾ったレッドブル勢を祝福するアロンソ
これで4番手に上がったアロンソの前を走るのは、同郷のスペイン人ドライバー、カルロス・サインツ(フェラーリ)となった。
フェラーリもまたメルセデス同様、ストレートで速かった。しかも、アロンソとハミルトンとのバトルをバックミラー越しに見ていたサインツは、10コーナーを警戒していた。するとアロンソは10コーナーでインを差すと見せかけて、相手に窮屈な走行ラインを走らせ、今度は立ち上がりの加速勝負に出た。思惑通り、加速の鈍ったサインツをストレート半ばで悠々と抜いて、アロンソは無線でこう叫んだ。
「イエス、バイバイ」
ベテランが狙う10シーズンぶりの優勝
メルセデス、フェラーリをコース上でオーバーテイクし、実力で表彰台に上がったアロンソの41歳とは思えないエネルギッシュな走りに、表彰台の頂点を期待する声も少なくない。そんな声援にアロンソは笑顔でこう答える。
「開幕戦で3位になれたんだから、期待するのは当然だ。レッドブルとの差はまだ大きいが、残りはまだ22レースある。私たちのチームはこれからさらにマシンを改良していく。それに22のレースがあれば、天候が崩れて路面コンディションが変わることもあるだろう。チャンスが巡ってくれば、絶対につかみに行くよ」
生きる伝説からの挑戦状とも思える言葉を聞いた、開幕戦ウィナーのフェルスタッペンも戦う準備はできている。
「アストンマーティンが今年、レースで勝利する可能性は十分にある」
現在41歳7カ月のアロンソが今季中に優勝すれば、ナイジェル・マンセル以来の40歳代でのグランプリウィナーとなり、マンセルの41歳3カ月を抜いて歴代7位となる。F1での最後の勝利はフェラーリ在籍時の2013年だった。
アロンソが元気だと、F1は面白い。